- フアンCEOが2026年5月20日の決算説明会でAIエージェント専用CPU「Vera」が2000億ドルの新市場を創出すると発表した
- Vera CPUは今年だけで200億ドル相当を販売済み。主要クラウド事業者と大手システムメーカー全社がパートナーとして参画している
- GPUが推論処理を、Vera CPUがエージェントのタスク実行を担う役割分担でNvidiaはAIインフラの二本柱戦略を描く
決算説明会で示した新市場戦略
Nvidiaのジェンスン・フアンCEOは2026年5月20日に行われた同社の決算説明会において、AIエージェント向け専用CPU「Vera」によってNvidiaにとって全く新しい2000億ドルのTAM(Total Addressable Market、獲得可能な市場規模の総量)が生まれると発表した。
フアン氏は「世界にはやがて数十億のAIエージェントが存在するようになる。それらのエージェントはすべてツールを使う。ちょうど人間がPCを使うように」と述べ、エージェントの普及が従来とは異なる形でプロセッサ需要を押し上げると説明した。数十億規模のエージェントが稼働すれば、それぞれが処理能力を必要とし、GPU一辺倒のインフラ設計では対応しきれなくなるという見立てだ。
世界初のAIエージェント専用CPU
Veraはフアン氏が「世界初のAIエージェント専用CPU」と位置付けるプロセッサだ。従来のクラウド向けCPUが複数のアプリケーションインスタンスを並行処理するために設計されているのに対し、Veraはトークン処理の速度に特化した設計を採る。
Veraは単体での購入も可能で、NvidiaのGPU「Rubin」とバンドルする構成も選択できる。フアン氏によれば「今年だけですでに200億ドル相当の単体Vera CPUを販売した」という。主要なハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)および大手システムメーカー全社がVera導入に向けてNvidiaとパートナーシップを結んでいるとも明かした。
GPUとVera CPUの役割分担
フアン氏が示したアーキテクチャでは、GPUとVera CPUが補完的な役割を担う。GPUはAIモデルの推論処理、いわば「考える」部分を受け持つ。一方、エージェントが具体的なタスクを実行する段階では主にCPU上で動作し、それぞれ独自のシステムを自律的に管理する。

この設計思想は、Google I/O 2026でGoogleが示した「エージェント型AI時代」の方向性とも重なる。AIが単なる質問応答にとどまらず、複雑なタスクを自律的に実行するエージェントとして普及する過程では、推論と実行を分離したインフラ設計が求められるとNvidiaは見ている。
財務実績が裏付ける需要の現実
同社の2026年1〜3月期売上は816億ドルを記録した。続く4〜6月期の売上見通しは910億ドルとさらなる成長を見込む。GPUによる成長が続くなか、フアン氏はVeraによってその勢いを補完する新たな収益柱を育てる方針を示した。
フアン氏が語る2000億ドルのTAMは、数十億のAIエージェントが実際にシステムとして稼働することを前提とした試算だ。今年だけで200億ドルという販売実績は、この市場が予測の段階を超えて既に動き始めていることを示している。
エージェント時代のインフラ変革
これまでNvidiaはデータセンター向けGPUを中心とした事業モデルで急成長を遂げてきた。Vera CPUの投入は、GPU市場とは別の収益源を確立しようとする試みとして位置付けられる。
GPUが「AIモデルの思考」を担い、Vera CPUが「エージェントの実行」を担うという構図は、AIインフラの新しい標準となる可能性がある。主要クラウド事業者全社がすでにパートナーとして参画しているという事実は、この構図が業界全体で受け入れられつつあることを示している。
