- ソフトバンク・NEC・ホンダ・ソニーを中核に「日本AI基盤モデル開発」が設立したと各紙が報道。三菱UFJなど金融・製造大手も出資
- 1兆パラメーター規模の国産AI基盤モデルを開発し、2030年度までにロボットや産業機械との連携(フィジカルAI)を目指す
- ソフトバンクは「公式発表ではないため答えられない」と取材に回答しており、詳細は各社からの正式発表待ちの状況
報道の概要
2026年4月12〜13日にかけて、日本経済新聞など複数のメディアが、ソフトバンクを中心とした大手企業連合による新会社設立を報じた。社名は「日本AI基盤モデル開発」とされ、ソフトバンク、日本電気(NEC)、本田技研工業(ホンダ)、ソニーグループの4社が中核企業となる。
報道によると、三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行のメガバンク3行に加え、日本製鉄や神戸製鋼所といった製造業大手も出資するとされる。国税庁の法人番号公表サイトによると、同名企業の法人番号は2026年1月9日に指定済みで、設立当初の商号は「竹芝準備8号株式会社」だった。2月18日に現商号へ変更し、本店所在地も東京都港区(東京ポートシティ竹芝オフィスタワー、ソフトバンク本社と同一)から渋谷区へ移転している。
ソフトバンクはITmedia AI+の取材に対して「公式発表ではないため答えられることはない」と回答しており、現時点では各社からの正式な発表はない。
1兆パラメーターという規模
報道が示す「1兆パラメーター規模」は、現在公開されている主要な大規模言語モデル(Large Language Model、LLM)と比べても最上位の水準に位置する。Metaの「Llama 3」は最大405億パラメーター、Googleの「Gemma 3」が最大270億パラメーターであることと比較すると、その規模の違いは一目瞭然だ。
GPT-4はMixture of Experts(MoE)と呼ばれる手法で実効的に1兆パラメーターを超えると推計されているが、それに匹敵するモデルを国産で開発することになる。単一の密なモデルとして1兆パラメーターを実現するには、GPU数万基規模の計算資源と大量の学習データが必要になる。ソフトバンク・NEC・ホンダ・ソニーという異なる業種の4社が連携する背景には、それぞれのデータと計算資源を持ち寄ることで単独では困難なスケールを実現する狙いがあるとみられる。
フィジカルAIとは何か
フィジカルAIとは、テキスト生成や画像認識といったデジタル空間で完結するAIとは異なり、ロボットや産業機械など物理的な装置と連携して実世界で動作するAIを指す。NVIDIAがこの概念を積極的に提唱しており、自動車の自律走行、工場の無人化、医療ロボットなどへの応用が主な対象となる。
ロボットの動作制御を担うAIには、カメラ映像・センサーデータ・音声などを統合的に処理するマルチモーダルな基盤モデルが有効とされる。ロボット向け Vision-Language Model(VLM)の開発競争は既に激化しており、HY-Embodied-0.5の事例に代表されるように、専用モデルでGeminiを超える性能が報告されるなど技術進化は急速だ。
ホンダはASIMOで培った二足歩行ロボットの知見、ソニーはイメージセンサー技術、NECはエンタープライズ向けAIの実績をそれぞれ持つ。これらの強みを1兆パラメーターの基盤モデルへ統合することで、製造ラインや物流施設での現場適用を目指す構想とみられる。
日本AI産業への位置づけ
国内では、Preferred NetworksのPLaMoやソフトバンクの「Sarashina2」など、各社が独自に国産基盤モデル開発を進めてきた。今回の報道が事実であれば、産業界を代表する4社が資本・技術・データを持ち寄る、国内では前例のない規模の企業連合となる。
戦略的な観点では、製造業起点のフィジカルAIへの特化は、汎用LLMでOpenAIやGoogleと競うのではなく、日本の製造業やロボット産業が強みを持つ領域を軸にした差別化と読める。一方、基盤モデル開発には継続的な大規模計算資源と運用コストが不可欠であり、三菱UFJをはじめとした金融機関の参画は資金調達面での持続性を意識したものとみられる。
出資比率や経営体制、技術ロードマップの詳細は公式発表がないため依然不明だ。国内AI産業の競争力という観点からも、各社の正式なアナウンスが注目される。
