- 5月から全府省庁で運用を開始した行政AI基盤「源内」が、参院本会議の答弁作成に初めて公式に活用された
- デジタル担当大臣が「この答弁もAIが原案を作成した」と国会で明言し、今回の質疑約29問中18問で源内を使用したと公表
- AIが生成した原案は職員による事実確認と決裁を経て最終化する二段階体制をとり、精度と行政上の説明責任を両立する
参院本会議での「公言」が意味するもの
2026年5月27日、参議院本会議でデジタル担当大臣は審議中に「この答弁はAIが原案を作成しました」と自ら述べた。国会の本会議という最も公式度の高い場で政府が行政AIの使用を明言したのは初めてとなる。
大臣は続けて、今回の質疑29問のうち18問で行政AI基盤「源内」を活用したと説明した。AIが草稿を作成し、担当職員が内容を確認して決裁を経た上で答弁として読み上げたというプロセスも併せて公表している。
行政AI基盤「源内」とは
「源内」は江戸時代の発明家・平賀源内にちなんで命名された政府共通の生成AI基盤で、デジタル庁が開発を主導した。2026年5月から全府省庁での運用を正式に開始しており、国会答弁の起案をはじめ、政策文書の草稿作成や問い合わせ対応など幅広い行政業務への適用が想定されている。
各省庁のシステムと接続し、所管する法律や施策データを参照しながら回答案を生成できる点が特徴とされる。個別省庁が独自にAIを導入するのではなく、政府横断の共通基盤として一元管理することで、セキュリティ要件や品質基準の統一を図っている。

職員確認と決裁を経る二段階体制
今回の運用で強調されたのは、AIが生成した原案をそのまま使うのではなく、担当職員が必ず事実確認を行い、上長の決裁を経て初めて最終答弁として確定するという体制だ。政府は「AIはあくまで起案支援ツールであり、最終的な内容の責任は職員と大臣が負う」という立場を示している。
この考え方は、数千規模のAIエージェントを統制するIBMのAIオペレーティングモデルでも示されているように、AIを大規模に組織展開する際の統制フレームワークとして官民を問わず共通の課題となっている。人間による監督層を明確に設けることで、AIの誤りや偏りに起因するリスクを吸収する構造が求められている。
海外の先行事例と日本の位置づけ
行政AIの公式利用は日本が先駆けではない。シンガポールは公務員向けAIアシスタント「Pair」を本格運用し、行政文書全般への活用を公式に認めた実績を持つ。英国もGov.ukを通じたChatGPTベースのパイロット運用を進め、欧州各国でも行政向けのAI導入実証が相次いでいる。
これらと比較すると、日本の「源内」は全府省庁への一斉展開と、本会議での公式な活用宣言という二点で踏み込んだ事例となった。一方で、答弁作成への適用が政策決定そのものにどこまで及ぶかについては、透明性の確保という観点から今後の議論が必要とみられる。
今後の課題と展望
運用開始直後ゆえに課題も残る。AIが生成した内容に誤りが含まれていた場合の責任の所在を制度的にどう明確化するかが問われる。職員が確認・決裁を行うとはいえ、大量の文書をAIに依存する体制が定着すれば、確認作業が形骸化するリスクも否定できない。
また、源内が参照する省庁データの鮮度管理や、省庁間で答弁トーンの一貫性が保たれるかという品質管理の問題も浮上する。デジタル庁は定期的なモデル更新と利用ログの監査体制を整備する方針とされているが、具体的な公開基準については引き続き情報開示が求められる。
国会答弁へのAI活用を大臣が自ら公言したことは、日本の行政DXが新たな段階に入ったことを象徴する出来事として、官民双方の関係者が注目している。
