- DeepSeekの評価額が数週間で200億ドルから450億ドルへ急上昇し、創業以来初の外部VC調達を進めていると複数メディアが報じた
- 中国国家ファンド「大基金」がラウンドをリードし、テンセントとアリババも参加を交渉中とされている
- 外部資本導入の主因は研究者へのエクイティ付与であり、Huawei Ascendチップとの戦略的連携も競争力の柱となっている
評価額が数週間で倍増した経緯
フィナンシャル・タイムズとブルームバーグの報道によると、中国のAIスタートアップDeepSeekが創業以来初めてとなる外部ベンチャーキャピタル投資を模索しており、その評価額は数週間のうちに200億ドル(約2.9兆円)から450億ドル(約6.5兆円)へと急上昇しました。
DeepSeekは2025年1月、米国の主要モデルに匹敵する推論・コーディング性能を、はるかに少ない計算コストで実現したLarge Language Model(LLM)を発表し、AI業界に衝撃を与えました。推論モデルをHugging Face上でオープンウェイトとして無償公開したことも、世界的な注目を集める要因となっています。当時NvidiaをはじめとするAI関連銘柄が一時的に急落したことは、同社の技術的手法が業界の前提を根底から揺さぶった証左です。
研究者の引き留めが外部調達の引き金に
DeepSeekを設立したのは中国のヘッジファンド運用会社出身の梁文鋒(Liang Wenfeng)氏です。同氏は現在も同社の約90%を保有しており、これまで外部からの投資を受け入れない方針を一貫して維持してきました。
今回、創業者が方針を転換した主な動機は研究者への株式付与にあるとされています。OpenAIやAnthropicといった競合他社が大規模な報酬パッケージで優秀な人材を獲得するなか、エクイティを持たないDeepSeekでは優秀な研究者の流出リスクが高まっていました。外部資本の導入は、トップ研究者を競争力ある条件で確保するための現実的な対応策です。
また、DeepSeekのモデルはHuawei AscendシリーズのAIチップ向けにも最適化されています。米国による半導体輸出規制を受けた中国国内のインフラ整備という文脈で、同社とHuaweiの連携は国家戦略上の重要性を帯びています。
国家ファンドと大手テックが参集
今回のラウンドをリードするのは、中国政府が支援する「中国集積回路産業投資ファンド(通称:大基金)」です。半導体産業の国産化推進を目的として設立されてきた大基金がAIスタートアップ投資に参入することは、国家戦略としてAI開発を後押しする明確な意思表示といえます。
さらに、テンセントとアリババの両社がラウンドへの参加を交渉中と報じられています。中国の2大テクノロジー企業がDeepSeekの株主となれば、クラウドインフラや商業展開での連携強化が期待でき、同社のスケールアップを大きく後押しする可能性があります。

米中AI覇権争いへの影響
DeepSeekが外部資本を獲得することで、研究人材の拡充とインフラ投資を同時に加速させることが可能になります。これまでの「少ない計算コストで高性能」という路線は維持しつつ、組織規模の拡大によって米国AI企業との競争力格差をさらに縮める狙いがあります。
技術面では、DeepSeek-R1を含むLLMのアライメント技術(RLHF・DPO・GRPO)の独自実装が同社の競争優位の核心をなしており、今後の資金力強化がこの研究基盤をさらに深化させるとみられています。
国家資本・民間大手・創業者の三者が一体となった今回の投資フェーズへの移行は、中国AIエコシステムの成熟度を示すとともに、米中双方の投資家と企業戦略担当者にとって見逃せない転換点となっています。
