- 参加企業の開発者の約半数が先週Claudeが単独で作成したプルリクエストをリリースしたと回答、AIが開発主体となる実態が数字で示された
- 新機能「dreaming」は複数のAIエージェントがメモを共有して学習を加速し、コードベース全体の効率向上を図る仕組み
- コードを読まないままリリースする開発者の増加に対し、スキル低下やセキュリティ脆弱性のリスクを指摘する声が相次いでいる
ロンドンで明かされた数字
2026年5月19日、AnthropicはロンドンでAI開発者向けイベント「Code with Claude」を開催した。GoogleのI/O 2026と同日という設定にもかかわらず、会場にはSpotify、Delivery Hero、Lovableなど多数の企業の開発者が集まった。
イベント内でAnthropicが参加者に問いかけたところ、約半数が「先週、Claudeが完全に作成したプルリクエスト(Pull Request)をリリースした」と手を挙げた。さらに注目されたのは、その多くが「そのコードをほとんど読まなかった」と答えた点だ。AI支援による開発が普及している中、人間の確認なしにAIが書いたコードが実際のプロダクトへ組み込まれていく実態が、あらためて数字として可視化された形となった。
Anthropicはこれに先立ち、SDK自動生成ツール「Stainless」を買収するなど、開発ツール領域への投資を強化してきた。「Code with Claude」イベントはその方向性をさらに押し進めるものとなっている。
dreaming機能の仕組み
イベントで注目を集めた機能のひとつが「dreaming」だ。Claude Codeエージェントが作業中に遭遇したエラーや解決策、コードベース固有のパターンをメモとして書き残し、後続のエージェントがそれを参照できるようにする仕組みとして説明されている。
複数のエージェントが同時並行で異なる機能を開発する場合、以前のエージェントが蓄積した知見を引き継いで作業を進めることができる。同じ失敗を繰り返さず、一度得られた解決策を次の作業に生かすことで、大規模なコードベースをエージェント群で分担管理する場合に特に効果を発揮すると見られている。個々のセッションを超えた継続的な改善を目指す設計だ。

開発者コミュニティの懸念
こうした動向に対し、ソフトウェア開発者コミュニティからは批判的な声も上がっている。RedditやHacker Newsでは、「AIが生成したコードに問題がないと言えるのは、そのコードをきちんと読んでいない人だけだ」という意見が共有された。AIが作成したコードを人間がレビューしないままリリースすることは、セキュリティ上の脆弱性を製品に持ち込むリスクを高めるという指摘だ。
もうひとつの懸念が、開発者自身のスキル低下だ。AIへの依存が深まるにつれ、コードを書く能力だけでなく読んで理解する能力まで失われていくとすれば、AI生成コードの品質を適切に判断すること自体が困難になる。こうした状況が連鎖的に進む可能性を危惧する声は少なくない。
Anthropicが描く開発の姿
批判に対してAnthropicは、「従来のソフトウェア開発のすべてのベストプラクティスは依然として適用される」と主張している。コードレビュー、テスト、セキュリティ監査といった工程の重要性はAI活用が進む中でも変わらないという立場だ。
一方で、Anthropicが最終的なビジョンとして示したのは「Claudeが自らを構築できる状態」だという。AIが自分自身のコードを書いて自己改善を続けるという方向性は、開発者の役割がどこへ向かうのかという問いを突きつけている。イベント会場では参加者から目立った不安の声は聞かれなかったと伝えられているが、ソフトウェア開発という仕事の性質と、それに関わる人間のスキルがどう変容していくかは、業界全体が向き合い続ける課題として残っている。
