- トランプ政権は6月12日ごろに実施したClaude Mythos 5の利用禁止を約2週間で撤回し、米国の100社超の企業・政府機関への再提供を許可した
- 商務長官ハワード・ルトニックが「適切なセーフガードが整っている」と判断し、対象組織に勤務する非米国籍従業員への適用も認められた
- 強力な保護機能を持つFable 5は今回の再許可の対象外で、Anthropicは一般提供の再開に向けて政府との協議を継続している
禁止措置から2週間で方針転換
トランプ政権は2026年6月12日ごろ、AnthropicのAIモデル「Claude Mythos 5」を対象に利用禁止措置を発動した。セキュリティ研究者が両モデルのセーフガードを迂回(うかい)できることを実証したことが発端で、有害コンテンツの生成支援や機密情報への不正アクセスといったリスクが懸念材料として挙がっていた。
禁止措置の適用から約2週間後、商務長官ハワード・ルトニック(Howard Lutnick)がこの方針を部分的に転換した。同長官はAnthropicの最高計算責任者トム・ブラウン(Tom Brown)宛ての書簡で、「適切なセーフガードが整っていると判断し、一部の信頼できるパートナーに対しClaude Mythos 5モデルへのアクセスを許可する」と明言した。
政府が技術的な検証を経て短期間で対応を修正した事例として、AI規制の現場では異例の展開として受け止められている。禁止措置の期間中、Mythos 5への依存度が高い組織は代替手段の検討や一時的な運用停止を余儀なくされており、業務計画の見直しが各所で発生していた。
対象は100社超、非米国籍従業員も含む
今回の再許可の対象は、米国の企業・政府機関あわせて100社超とされている。業種の内訳は公式には公表されていないが、防衛関連企業や重要インフラ事業者、国家安全保障に関わる政府機関が含まれると報じられている。これらの組織が「信頼できるパートナー」として認定されるためには、政府が定めるセーフガードの基準を満たすことが条件となっている。
当初の禁止措置では国籍を問わずアクセスが制限されていたが、新たな方針では承認された組織に勤務する外国籍スタッフも利用できるようになった。Anthropic自社の国際スタッフも対象に含まれており、グローバルに展開する企業の業務継続性への配慮がうかがえる。
セーフガードの具体的な技術仕様は現時点で公表されていない。Anthropicの広報担当者は取材に対し、「政府と連携して安全策の実装を進めている」との方針を示すにとどまり、詳細な開示については時期を明言していない。
Fable 5は依然として対象外
今回の再許可においてFable 5は明示的に除外されている。Fable 5はMythos 5よりも強力な保護機能を備えたモデルとされており、当初の禁止措置でも両モデルが同時に対象となった。しかし今回の商務長官の指示書にはFable 5への言及がなく、一般提供の再開については別途の検討が必要な状況だ。
Anthropicは公式声明の中で「Mythos 5へのアクセス拡大に向けて政府との協力を続け、Fable 5についても一般提供の再開を目指して取り組んでいる」と述べた。OpenAIがGPT-5.6シリーズを政府限定でプレビュー公開した事例と同様に、高性能AIモデルの提供をめぐる政府との段階的な調整が業界の標準的な流れになりつつある。
今回の措置はAIガバナンスの新たな局面を示している。政府が特定モデルの利用を一時停止し、条件付きで再許可できる枠組みが定着しつつある中で、企業は政策変更に対応できる運用体制の整備を迫られている。Mythos 5の再提供範囲がどこまで広がるか、Fable 5の一般利用再開がいつ実現するかは、今後の米国AI政策を占う重要な指標となる。
