- OpenAIが企業の顧客対応・社内問い合わせ向けに、音声とチャットのAIエージェントを運用する製品「Presence」を発表
- ポリシー定義、ガードレール、シミュレーション評価、Codexによる改善提案までを一体で提供する
- 自社の英語電話サポートでは受電の75%を人手を介さず解決し、BBVAやソフトバンクなどが先行導入
Presenceとは何か
OpenAIは7月22日、企業がAIエージェントを実際の業務で運用するための製品「OpenAI Presence」を発表しました。顧客からの問い合わせに答え、社内システムを参照し、許可された操作を実行し、必要なときは人間の担当者に引き継ぐところまでを一つの製品として提供します。
OpenAIは発表のなかで、企業にとっての課題は「AIエージェントが動くことを証明する段階ではなく、実運用で価値の高い業務を任せられるだけの信頼性を持たせること」に移ったと説明しています。モデルの推論能力そのものではなく、組織のルールに沿って安定して動かす仕組みに焦点を当てた製品といえます。
エージェントの一般的な仕組みや設計の考え方はAIエージェントとは?仕組み・設計パターン・マルチエージェントまでわかりやすく解説で整理しています。
音声とチャットに対応
Presenceは音声とチャットの両方でリアルタイムのやり取りに対応します。想定される用途として、カスタマーサポート、アウトバウンドの営業活動、リスクの高い社内業務が挙げられています。
具体例としては、請求関連のトラブル対応、保険金請求のサポート、従業員からのIT関連の依頼などが示されました。電話窓口とチャット窓口の双方を同じ設計思想でカバーする点が特徴です。
ポリシーで動作を統制
導入企業は、エージェントが自律的に実行してよい操作、事前承認が必要な操作、人間へのエスカレーションが必要な状況をあらかじめ定義します。あわせて標準的な業務手順やコンプライアンス上の規則も設定できます。
ガードレールは、やり取りが定めた境界を越えそうになった時点で介入する仕組みです。管理画面では稼働状況の指標や、問い合わせ意図の分析結果を確認できます。

本番前にシミュレーション
運用開始前には、シミュレーションと採点の仕組みでエージェントの挙動を検証します。よくある問い合わせだけでなく、例外的なケースやリスクの高い場面も対象に、期待した結果になるか、定めたポリシーに従っているかを確認します。
導入時はOpenAIの担当エンジニアが企業側と一緒に作業し、対象業務の選定、必要な知識やシステムとの接続、権限とポリシーの設定、テスト、本番投入までを進める流れです。
Codexが改善を回す
運用開始後は、本番のやり取りの記録、エスカレーションの発生状況、品質指標をもとに、コーディング支援のCodexが改善案を提示します。提案された変更は本番稼働中のバージョンと比較検証でき、承認後に段階的に反映する仕組みです。
OpenAIによれば、この改善ループを回した結果、10日間で人間への引き継ぎ率を15ポイント下げられたといいます。

自社窓口で75%を無人解決
OpenAIは自社の電話サポート窓口(1-888-GPT-0090)でPresenceを使っており、受電した問い合わせの75%を人手を介さずに解決していると公表しました。自社運用の実績を性能の根拠として示した形です。
残りの4分の1は人間の担当者に引き継がれる計算になります。全件の自動化ではなく、定型的な問い合わせを引き受けて人間の負荷を下げる位置づけと読み取れます。
提供形態と導入企業
Presenceは限定的な一般提供として、条件を満たす法人顧客に提供されます。OpenAIのフォワードデプロイドエンジニアと一部のシステムインテグレーターが導入を主導し、自分で申し込んですぐ使える形では提供されません。利用を検討する企業は、担当のアカウントチームに問い合わせる必要があります。
先行事例として、メキシコで音声による銀行サポートを検討するBBVA、日本語での自然な対話を検証するソフトバンク、悪天候時など問い合わせが急増する場面での対応を開発中のIAGが挙げられました。
競合市場に本家が参入
顧客対応エージェントの領域では、Sierra、Salesforce Agentforce、Intercom Finといったサービスが先行しています。そこへ、これらの多くが基盤として使うモデルの提供元であるOpenAI自身が製品として参入する構図になりました。
導入がエンジニア主導の個別プロジェクトである以上、当面は大企業向けに限られます。それでも、ポリシー定義から評価、改善までを一つの製品にまとめた設計は、コールセンター運用のあり方を見直す材料になりそうです。