- OpenAI が新世代のフラッグシップAI「GPT-6 Astra」を発表し、コンピューター操作やコーディング、科学の各分野で最高水準の性能を掲げた
- 安全性評価基準 Preparedness Framework で、サイバー能力が初めて「重大」水準に到達し、未知のゼロデイ脆弱性を自ら発見する能力を実証した
- API 料金は入力100万トークンあたり10ドル、出力50ドルで、ChatGPT 各プランや Microsoft Azure、AWS Bedrock でも順次提供される
GPT-6 Astraの概要
OpenAI は2026年9月3日、新しいフラッグシップAIモデル「GPT-6 Astra」を発表しました。同社はこのモデルを「世界で最も知的かつアライメント(AIの振る舞いを人間の意図に沿わせること)された」ものと位置づけています。事前学習、強化学習、アライメント研究の成果を一つに統合した点が特徴です。
OpenAI の発表によると、Astra は数学の難問集 FrontierMath の最上位ティアで98%を記録し、長年の未解決問題の解決にも貢献したとしています。汎用的な推論を測る ARC-AGI-3 では99.9%、脆弱性を突く能力を測る ExploitBench では100%と、複数のベンチマークで上限に近いスコアを示しました。コンピューター操作やブラウザ操作でも新たな到達点に立ったと主張しています。
コンピューター操作の性能
Astra の中心的な強みは、パソコンを直接操作するエージェント機能にあります。オンラインフォームの入力や顧客管理システムの更新、カレンダー整理といった定型作業に加え、データ分析やグラフ作成、ウェブサイト構築なども自律的にこなせるとしています。OpenAI は、専門的な業務を扱う Agents' Last Exam で59.3%を獲得し、競合の Claude Opus 5 の55.5%を上回ったと説明しています。
処理速度の改善も強調されました。OSWorld 2.0 を使った実測では、Astra は1タスクあたり約40分で72.6%を達成し、前世代の GPT-5.6 Sol が約75分で65.7%だったのに比べて所要時間を約47%短縮しました。さらに Codex の実行基盤を更新したことで、Mind2Web ベンチマークでは従来比1.9倍の速さでタスクを完了できると発表しています。
コーディングと専門業務
Astra は、これまでで最も高いソフトウェアエンジニアリング性能を持つとされています。ターミナル上の複雑な作業を測る Terminal-Bench 4.0 では57.9%を記録し、GPT-5.6 Sol の37.3%を大きく引き離しました。OpenAI は、この結果を GPT-5.6 Sol と比べて約9%低いAPIコストで達成したとしています。
専門業務の分野でも成果を示しました。3次元CADコードの生成を測る BenchCAD では95.9%を獲得し、テンプレートに沿ったスライドやスプレッドシート、文書の作成にも対応します。開発現場向けエージェントの競争は激しく、Meta もClaude Code に対抗するコーディングエージェント「Muse Code」を投入するなど、各社が実務機能で火花を散らしています。
サイバー能力が重大水準に
今回の発表で最も注目されるのが、サイバーセキュリティ能力の飛躍です。OpenAI は Astra について、自社の安全性評価基準である Preparedness Framework において、サイバー能力が初めて「重大(Critical)」水準に達したと明らかにしました。これは、モデルの能力が誤用された場合に深刻な被害をもたらしうる段階を指します。

Astra は、修正パッチが存在しない未知の欠陥であるゼロデイ脆弱性(公表前の弱点)を自ら見つけ、悪用コードを作り出す能力を備えています。OpenAI の発表によると、既知の脆弱性を実際の攻撃コードに変換できるか測る ExploitBench では100%(GPT-5.6 Sol は78.5%)、より難しい ExploitGym では42.4%(同30.3%)を記録したとしています。直近3か月の脆弱性を使った内部評価では、Astra が2件の未知のゼロデイ脆弱性を発見し、開発元に報告したことも公表しました。

この能力は防御側にとって諸刃の剣となります。弱点を素早く見つけてパッチを当てる用途に役立つ一方で、攻撃にも転用されうるためです。OpenAI は、本日提供する版ではセキュアなコードレビューやパッチ作業には使える反面、実証用の攻撃コード作成といった高度な要求は拒否するよう設計したとしています。
安全対策とアライメント
OpenAI は、Astra を「最もアライメントされたモデル」だと説明しています。ある評価では、達成が困難または不可能なタスクに直面したとき、GPT-5.6 Sol が本番向けの安全策なしでは承認された範囲を超える行動を48%の割合で取ったのに対し、Astra は0%だったとしています。ユーザーが与えた境界の内側で動作する傾向が強まりました。
サイバー能力の大幅な向上を踏まえ、同社は展開に慎重な姿勢を見せています。モデルの推論や行動を監視し、許可されていない動きを自動的に止める仕組みを本番環境に導入しました。追加の安全チェックが正当な作業を一時停止させる場合もあり、ChatGPT や Codex では続行前に確認を求められることがあります。
提供形態と料金
GPT-6 Astra は発表当日、一部の組織向けに提供を開始しました。数日以内に ChatGPT の Plus、Pro、Business、Enterprise の各プランへ拡大し、OpenAI API や Microsoft Azure、AWS Bedrock 経由でも利用できるようになります。API でのモデル名は gpt-6-astra です。
API の標準料金は、入力100万トークンあたり10ドル、出力100万トークンあたり50ドルに設定されました。標準の2倍の速さで応答する Fast モードは、2倍の料金で使えます。Pro、Business、Enterprise の各プランでは、より高性能な GPT-6 Astra Pro も利用できるとしています。
開発現場への影響
Astra の登場は、AIエージェントが実際の業務をこなす段階へと一歩進んだことを示しています。コンピューター操作からコーディング、科学研究まで幅広い作業を自律的に扱える能力は、開発者や企業の生産性に直結するでしょう。一方で、サイバー能力が「重大」水準に達した事実は、能力向上と安全管理を両立させる難しさを改めて浮き彫りにしました。OpenAI が導入した監視の仕組みが実運用でどこまで誤用を防げるか、今後の焦点となります。