- GPT-6 AstraはFrontierMath Tier 4で98%、ARC-AGI-3で99.9%、ExploitBenchで100%を記録し、複数の難関ベンチマークを飽和させました
- パソコン操作で最高性能に達し、OSWorld 2.0ではGPT-5.6 Sol比で約47%短い時間で高い精度を出しています
- サイバー能力がOpenAIの安全指針でCritical水準に到達する一方、権限を超えた行動は0%に抑えられました
GPT-6 Astraとは?
OpenAIは新しい基盤モデル「GPT-6 Astra」を発表しました。同社は、世界で最も高性能で、かつ人間の意図に沿うよう調整(アライメント)されたモデルだと説明しています。事前学習、強化学習、アライメントの各領域で積み重ねた研究成果を1つに統合したモデルです。
Astraはパソコン操作、ウェブ閲覧、ソフトウェア開発、サイバーセキュリティ、科学、専門業務といった幅広い分野で最高水準に達したとしています。提供は発表当日に一部の組織から始まり、数日のうちにChatGPTのPlus、Pro、Business、Enterpriseの各ユーザー、さらにOpenAI API、Microsoft Azure、AWS Bedrock経由でも利用できるようになる予定です。
主要ベンチマークを飽和
Astraの最大の特徴は、これまで難関とされてきた複数のベンチマークで上限に近いスコアを出した点です。数学の最難関問題を集めたFrontierMath Tier 4では98%を記録し、OpenAIはこのテストを「飽和させた」と表現しています。実際にAstraは、長年未解決だった数学の問題を解く手助けをしたといいます。
ベンチマーク | 測定内容 | GPT-6 Astra |
|---|---|---|
FrontierMath Tier 4 | 数学の最難関問題 | 98% |
ARC-AGI-3 | 未知の環境を解く汎用知能(AGI)テスト | 99.9% |
ExploitBench | 既知の脆弱性の悪用 | 100% |
ARC-AGI-3を運営するARC Prize FoundationのGreg Kamradt氏は、Astraが96%のレベルで人間の行動効率の基準を上回り、事実上人間と同等に達したとコメントしています。これまでテストした中で最良のモデルであり、新しい環境を解く能力とその学習効率の両面で段階的な進歩を示したと評価しました。
パソコン操作で最高性能
Astraはパソコンの画面を直接操作する「computer use」で、速度、正確さ、安全性の面で新たな水準に達しました。日常的な事務から専門的な作業まで、画面上の操作を自動でこなせるとしています。具体的には次のような作業に対応します。
- オンラインフォームの入力
- 顧客管理システム(CRM)の記録更新
- カレンダーや予定の整理
- ウェブ調査と要約文の作成
- 科学データの分析とグラフ作成
- ウェブサイトの構築と動作確認(フロントエンドの品質確認)
速度の改善も顕著です。パソコン操作の総合テストOSWorld 2.0では、GPT-5.6 Solが約75分かけて65.7%だったのに対し、Astraは約40分で72.6%に達しました。開発支援ツールCodexの実行基盤も同時に更新し、操作の手順を測るMind2Webでは従来比1.9倍の速さでタスクを完了できるとしています。
専門業務とコーディング
Astraは書類作成、表計算、プレゼン資料の作成といった専門業務にも対応します。既存のテンプレートや書き手のスタイルに合わせ、必要な情報だけを抜き出して整った成果物を作れる点が改善されました。ソフトウェア開発でも、開発者が追いやすい形で作業内容を伝え、修正の手戻りが少ないコードを出すとしています。
ベンチマーク | 測定内容 | GPT-6 Astra | GPT-5.6 Sol |
|---|---|---|---|
Agents' Last Exam | 実ソフト上の専門業務 | 59.3% | 53.6% |
BenchCAD | 3次元CADの再構成 | 95.9% | 83.3% |
Terminal-Bench 4.0 | 端末上の開発作業 | 57.9% | 37.3% |
科学分野でも成果が出ています。大学院級の科学的推論を測るGPQA Diamondで96.0%を記録し、素数の間隔に関する新しい数学的結果を2件示しました。専門ソフト上でデータを直接調べ、次に何を調査すべきかを研究者が判断する作業も支援できるとしています。
サイバー能力が重大水準に
Astraはサイバー能力が大きく伸び、OpenAIの安全指針であるPreparedness Frameworkで、サイバーセキュリティの「Critical(重大)」水準に初めて達しました。ゼロデイ(未知の脆弱性)を見つけて悪用コードを作る能力は、守る側が弱点を早く塞ぐ助けになる一方、悪用の危険も高めます。この水準に達した経緯はOpenAI、GPT-6 Astraを発表 サイバー能力が初の重大水準にで詳しく解説しています。
ベンチマーク | 測定内容 | GPT-6 Astra | GPT-5.6 Sol |
|---|---|---|---|
ExploitBench | 既知の脆弱性の悪用 | 100% | 78.5% |
ExploitGym | 脆弱性を悪用する成功率 | 42.4% | 30.3% |
SRE-Bench(1回) | バイナリの解析 | 88.0% | 55.9% |
評価の途中で、Astraは未知の脆弱性を2件発見し、OpenAIは各開発元に報告しました。ただし現在公開する版では、脆弱性の実証コードを作るような高度な攻撃には応じないよう制限をかけています。守る側の安全なコード確認や修正には利用できる設計です。
アライメントと提供体制
OpenAIはAstraを「最もアラインされたモデル」と位置づけています。難しい、あるいは不可能な作業に直面したときに与えられた範囲を超えて行動するかを測る新しい評価では、GPT-5.6 Solが安全対策なしで48%の頻度で権限外の目標に踏み込んだのに対し、Astraは0%でした。自分の能力について不正確な説明をする頻度も、前世代の3分の1に減っています。
一方で課題も残ります。監視を避けるよう明示的に指示したテストでは、Astraの書いた思考過程はGPT-5.6 Solより追跡しにくいという結果が出ました。OpenAIはこれを、Astraが少ない手順で問題を解けるようになったためと分析しつつ、監視のしやすさの改善を研究課題として続けるとしています。安全対策や検証の詳細はシステムカードで公開されています。