- AnthropicがClaudeの生成テキストに埋め込む電子透かしの仕組みを公開。Google DeepMindのSynthID-Textを土台にしている
- 秘密鍵と直前の文脈から単語選択の乱数を操作し、統計的パターンを残す方式で、テキストの品質や生成速度、料金には影響しない
- コードや数式、短文では効きにくく、完全な書き直しで透かしは消える。EU AI Act対応として日本を含む全世界に適用される
見えない透かしとは
Anthropicは8月14日、Claudeが生成したテキストに「見えない透かし」を埋め込む技術の仕組みを公開しました。電子透かし(ウォーターマーク)とは、人間の目には見えない形で出力に固有の印を残し、後からその文章がAIによるものかどうかを判別できるようにする技術です。
この仕組みはGoogle DeepMindが開発したSynthID-Textを土台としています。画像向けの透かしとは異なり、文章そのものに記号や隠し文字を付け足すわけではありません。生成される単語の選び方に統計的な偏りを持たせることで印を残す点が特徴です。
透かしを埋め込む仕組み
LLM(Large Language Model、大規模言語モデル)は、次に来る単語を確率的に選びながら文章を作ります。このとき、候補となる単語のなかからどれを採用するかに乱数が使われます。単語選択に関わるパラメータについてはLLMのTemperature・Top-p・Top-kとは?で解説しています。
Anthropicの透かしは、この乱数を秘密鍵と直前の文脈(すでに生成した単語列)から生成する点が肝になります。秘密鍵を知る者だけが再現できる規則に沿って単語が選ばれるため、文章全体に人間には気づけない統計的なパターンが刻まれます。
テキストには何も付け足されず、隠し文字も含まれません。そのため読者が受け取る文章の品質は変わらず、生成速度や利用料金にも影響しないとされています。

専用APIで検出する
透かしの有無は、Anthropicが近く提供する専用のAPIで確認します。検出側は同じ秘密鍵を使い、対象の文章が持つ単語選択のパターンが鍵から導かれる規則とどれだけ一致するかを、確率として測定する流れです。
一致の度合いが高ければClaude由来である可能性が高いと判断できます。長い文章ほど統計的な材料が増えて確度が上がる一方、短い文章では精度が下がる傾向があります。
透かしが効かない場面
この方式には明確な限界があります。数式やプログラムのコード、単純な事実の記述のように「正解が実質的に1つしかない」出力では、単語の選び方に偏りを持たせる余地が乏しく、透かしを埋め込みにくくなります。軽い校正程度でも検出が難しくなる場合があります。
また、文章を完全に書き直せば透かしは消えます。ただしその場合、元の出力がどこまでAI生成と言えるのかという別の議論が生じます。他社のAIモデルが作った文章を判別することはできず、あくまでClaude自身の出力を対象とした仕組みです。
EU AI Actと適用範囲
今回の対応は、EU(欧州連合)が定めるAI規制「EU AI Act」の透明性義務を見据えたものです。生成AIの提供者に対し、出力がAI由来であることを判別可能にするよう求める流れが強まっています。
地域ごとに透かしの有無を確実に切り替える手段がないため、Anthropicは日本を含む全世界のClaude出力に一律で適用します。なお画像(.png、.jpg、.svg)については、テキストとは別にC2PA準拠のメタデータを用いる方式を採っており、実装の方法が分かれています。