- GoogleがホワイトハウスのAI科学振興策「Genesis Mission」へ4000万ドル相当のAIトークンとクラウドクレジットを拠出
- AlphaFold 3やAlphaEvolve、Gemini for Governmentを米エネルギー省傘下の17国立研究所へ提供
- 電子顕微鏡の調整時間を90分から13分へ短縮するなど、基礎科学の生産性向上が実例で示された
4000万ドル拠出の概要
Google DeepMind と Google Cloud は2026年7月23日(現地時間)、米国のAI科学振興策「Genesis Mission」に対し、総額4000万ドル相当を拠出すると発表しました。同日開かれた「DOE Genesis Mission Summit 2026」で明らかにされたものです。
拠出の中身は、AIモデルを利用するためのトークンと、Google Cloud のクラウドクレジットを組み合わせた形です。提供先は米エネルギー省(Department of Energy、DOE)で、傘下の17の国立研究所すべてが対象になります。
Genesis Missionとは
Genesis Mission は、ホワイトハウスが主導する国家イニシアチブです。AIを活用し、米国の科学的発見の速度を今後10年以内に2倍へ引き上げることを目標に掲げています。
今回の枠組みでGoogleは2層の支援を用意しました。1つは Google DeepMind が開発する科学向けフロンティアAIツールへの無期限アクセス、もう1つは Gemini for Government の利用枠(座席とトークン)を1年間提供する部分です。後者は数万人規模の研究者や職員が使える想定になっています。
提供される科学AIツール
提供対象には、タンパク質や生体分子の構造・相互作用を予測する AlphaFold 3、Gemini と統合したコーディング・発見エージェント AlphaEvolve が含まれます。
このほか、DNA変異が生物や疾病に与える影響を解析する AlphaGenome、AI気象予測モデル群の WeatherNext、地球規模のマッピング基盤 AlphaEarth Foundations が並びます。行政業務向けには、GoogleのGemini モデルを安全に扱える Gemini for Government が用意されました。
Google DeepMind はこれらを届けるため、17の国立研究所を対象とした早期アクセスプログラムを立ち上げています。Genesis Mission の助成対象者が優先される仕組みです。
顕微鏡調整を8倍高速化
発表では、AIが基礎科学の現場をどう変えるかを示す具体例が紹介されました。National Laboratory of the Rockies の材料データ科学者 Steven R. Spurgeon 氏によると、電子顕微鏡に Gemini を組み込んだ結果、調整(キャリブレーション)にかかる時間が従来の90分以上から約13分へ短縮されたといいます。約8倍の高速化です。
画像のピント合わせに必要な手作業のステップも、最大50から2へと大きく減りました。観察・推論・判断をリアルタイムで回す自律的な実験ワークフローが実現し、手作業では届かなかった材料設計の探索が可能になったとしています。

Pacific Northwest National Laboratory でも、AlphaEvolve を複雑な数学システムの解析に使い、人手では追い切れない隠れたつながりを自動で見つける取り組みが進んでいます。通常なら数年を要する発見を早められると期待されています。
国家科学を支えるAI競争
フロンティアAIを国立研究所へ開放する動きは、基礎研究の生産性を底上げすると同時に、自社モデルを最先端の科学現場で鍛える機会にもつながります。AI各社が国家の研究基盤を競って支える構図が、業界全体で強まりつつあります。
Googleは今回、商用サービスの提供にとどまらず、公共の研究インフラへAIを直接組み込む姿勢を鮮明にしました。科学的発見のスピードそのものを引き上げる試みが、実際の数値を伴って動き始めています。
