- Preferred Networks(PFN)が国産LLM「PLaMo」を設計段階から自社開発する狙いを、2026年8月17日公開のITmediaインタビューで語った
- 学習データを自ら決められるため著作権侵害リスクの説明や不具合の原因特定がしやすく、説明責任を果たせる点を強みとする
- AIがインフラ化するなか、海外モデルの供給が世界情勢に左右される地政学リスクを避ける狙いも背景にある
PLaMoをゼロから作る狙い
Preferred Networks(PFN)が、大規模言語モデル(Large Language Model、以下LLM)「PLaMo」を設計から自社で手がける理由を明らかにしました。2026年8月17日に公開されたITmediaのインタビューで、LLM開発事業本部本部長の田中大輔氏は「設計から主体的にやっていることが重要だ」と語っています。
一般的に公開されているオープンモデルは、モデルの重み(パラメータ)だけが配布され、どんなデータでどう学習したかは明かされないことが多いのが実情です。これに対しPFNは、事前学習から自前で行う「フルスクラッチ」という手法を選びました。海外の既存モデルに手を加えるのではなく、土台から組み上げる方針だと言えます。
透明性と説明責任
フルスクラッチ最大の利点として挙げられたのが、学習データをめぐる説明のしやすさです。PLaMoは学習に使うデータセットを自社で決められるため、著作権を侵害するデータが含まれていないかを説明できるとしています。
不具合が起きたときの原因追跡でも差が出ます。事実と異なる内容をもっともらしく生成してしまう「ハルシネーション」が発生した場合、自社開発なら「データセットのここが悪かったから直しましょう」と原因にさかのぼって対処できると田中氏は説明しました。データの中身が見えない外部モデルでは、こうした切り分けは難しくなります。この「説明責任を果たせる」という点が、企業向け提供での差別化につながる見込みです。

図に示すように、フルスクラッチではデータ選定から学習まで一貫して自社が握るのに対し、追加学習は既存モデルの上に調整を重ねる形になります。透明性の高さと開発コストの重さは、この構造の違いから生まれます。
日本語処理とコスト
設計を自ら握ることは、日本語の扱いやすさにも効いています。PLaMoは独自の「トークナイザー」(文章を処理単位に分解する仕組み)を備え、海外モデルと比べてトークン消費を約2〜3割削減できるとPFNは述べています。処理量が減れば、その分だけ利用コストも抑えられます。
日本文化や日本語特有の知識を設計段階から組み込める点も見逃せません。最新モデル「PLaMo 3.0 Prime」では、日本語利用で最もコスト効率の良いAIを目指すとしており、翻訳に特化した「PLaMo翻訳」も同じ方向性で展開されています。オープンモデルの活用が世界的に広がるなか(Hugging Faceがオープンモデル2026年夏を総括 ダウンロード83%が1B未満の実態でも触れたとおり)、PFNはあえて自社開発という路線を選んだことになります。
インフラ化と地政学リスク
もう一つの背景が、供給の安定性です。LLM企画部部長のムジビヤ・アディヤン氏は「AIモデルはすでにインフラ化しており、世界情勢に左右されるリスクは大きい」と指摘しています。電力や通信と同じように、AIが社会の土台になりつつあるという認識です。
アディヤン氏は具体例として、2026年6月に米Anthropicの高性能モデルが米政府の命令で提供停止に至った事例をインタビューのなかで挙げました。海外モデルに依存すると、こうした国外の政策判断によって使えなくなる恐れがあります。自国で開発・運用できる国産AIを持つことは、いわゆるデータ主権を確保する手段になるという主張です。
追加学習との使い分け
もっとも、PFNはフルスクラッチだけに固執しているわけではありません。田中氏は「責任あるモデルを出せる点でフルスクラッチには価値がある」としつつ、「最新のオープンモデルに追加学習するだけで十分な場合もある」と述べ、医療分野での導入事例に触れました。用途に応じて両者を使い分ける構えです。
計算資源については、国内基盤だけでは足りず海外も併用しているのが現状だと明かしています。将来に向けては、2026年7月に発表したAI企業Noetraとの協業があり、ロボットを自律制御する「フィジカルAI」向けの基盤モデルを国内の計算基盤で構築する計画です。早ければ2027年ごろの本格的な国産AI実現を見据えており、透明性と供給の安定を両立させる取り組みが続きます。