- SambaNova Systemsが評価額110億ドルでシリーズFの第一次クローズとして10億ドルを調達。前回ラウンドからわずか5カ月での再ラウンドとなった
- General Atlantic主導でBlackRock、Qatar Investment Authorityなど大手機関投資家が参加。追加投資家による第二次クローズも近々予定
- Intelによる約16億ドルの買収提案を拒否し、推論特化チップ「SN50」の量産立ち上げとIPOを視野に独立路線を継続
5カ月でのメガラウンド再来
AIチップ設計会社SambaNova Systemsは2026年7月、シリーズFラウンドの第一次クローズとして10億ドルの調達を発表しました。企業評価額は110億ドルに達しており、前回ラウンドからわずか5カ月での再調達となります。CEOのロドリゴ・リャン氏は「数週間以内に追加投資家が加わり、第二次クローズが完了する見込み」と述べており、総調達額はさらに拡大する可能性があります。
リード投資家はGrowth株に強みを持つGeneral Atlantic。その他にBlackRock、T. Rowe Price Associates、Capital Group、Vista Equity Partners、Qatar Investment Authorityといった大手機関投資家が参加しました。IntelはSambaNova のシリーズC以来の継続出資者として、今回も名を連ねています。
推論特化チップの強み
SambaNova の主力製品は、AI推論向けに設計されたカスタムチップとシステムです。2023年9月に発表した「SN40L」はクラウドとオンプレミスの両環境に対応しており、2026年2月に発表した次世代「SN50」は2026年下期の出荷開始を予定しています。SoftBankが第一デプロイメントパートナーに選ばれており、大規模商用展開が近づいています。
同社が強調するのは「数兆パラメータのモデルを単一ラックで動かせる」という推論密度です。NVIDIAのGPUが学習から推論まで汎用的に対応するのに対し、SambaNova は推論に特化した設計で電力あたりの処理性能を高めています。この差別化が、レイテンシとコストに敏感な企業顧客に訴求しています。
顧客基盤と市場戦略
顧客にはJPMorganChaseとSaudi Aramcoが名を連ねており、金融と資源・エネルギーという規制産業での実績が際立ちます。リャンCEOは顧客を「主権クラウド・ネオクラウド・企業内部構築」の3タイプに分類し、それぞれにオンプレミス型の推論基盤を提案しています。
企業がクラウドベンダーへの依存を減らしてAI推論を自社インフラで完結させたいというニーズは、データ主権の観点からも高まっています。マイクロンが広島工場に1.5兆円を投じてHBM向け製造能力を増強するなど、AI向け半導体インフラ全体への投資が加速するなか、SambaNova は推論に特化したシステムベンダーとして独自の立ち位置を確立しようとしています。
Intel買収交渉と独立路線
2025年12月のBloombergの報道によると、Intelは約16億ドルでSambaNova の買収交渉を進めていました。同社はこれを拒否して独立路線を選びました。今回の評価額110億ドルと比較すると、16億ドルというオファーは当時の企業価値を大幅に下回るものだったとみられます。リャンCEOは「常に買収提案を受けているが、公開企業として独立するのが目標」と述べており、IPOを視野に入れた調達であることを示唆しています。
Intelは買収が不成立となったにもかかわらず、今回のシリーズFにも出資を継続しています。競合であり支援者でもあるという複雑な関係は、AIチップ業界の再編が依然として流動的であることを示しています。
AI推論需要の急拡大
5カ月でのメガラウンド再来は、AI推論インフラへの需要の急拡大を反映しています。大規模言語モデルの推論コストは今や学習コストを上回る規模になりつつあり、推論に最適化されたカスタムシリコンへの注目は今後も続く見通しです。SambaNova の次の焦点は、SN50の量産立ち上げと主要顧客でのスケールアップ、そして業績拡大によるIPO準備となります。
