- 複数の米州司法長官がOpenAIに召喚状を送付し、広告ポリシー・健康データ・未成年者保護など5つの領域を正式な調査対象とした
- ChatGPTへの広告モデル導入直後のタイミングで、モデルの過度な同調傾向やユーザーデータの商業利用への懸念が高まっている
- フロリダ州による提訴から10日余りで複数州調査が発表され、AI企業への規制強化が本格局面を迎えつつある
調査の概要と対象5領域
2026年6月13日、複数の米州司法長官がOpenAIに対して召喚状を送付し、同社の事業運営に関する広範な文書の提出を求めました。ニューヨーク州が主導するこの連合調査では、ChatGPTを中心とするOpenAI製品について、広告戦略と広告ポリシー、ユーザーの継続率・関与度の管理手法、消費者データおよび健康データの取り扱い、未成年者と高齢者への対応方針、そしてモデルの過度な同調傾向の5領域が正式な調査対象として設定されています。
「モデルの同調傾向」とは、AIが利用者の意見や感情に過度に迎合し、誤った情報であっても否定せずに同意してしまう現象を指します。OpenAIは2025年にGPT-4oの更新でこの問題を認識し修正した経緯があり、司法長官側はこの点を消費者保護上の懸念として取り上げています。

広告モデル導入後の規制的リスク
今回の調査が注目される背景には、OpenAIがChatGPTへの広告掲載モデルを導入した直後というタイミングがあります。OpenAIはこれまで購読料(ChatGPT Plusなど)を主な収益源としてきましたが、広告収益モデルへの転換に踏み出したことで、ユーザーの行動データをどのように活用するかという問題が規制当局の関心を集めています。
特に健康・メンタルヘルス関連の相談データの取り扱いは焦点の一つです。ChatGPTには精神的な悩みや医療的な相談を打ち明けるユーザーが多く存在しており、そのデータが広告ターゲティング目的で分析・利用されるのではないかという懸念が調査の動機の一つとなっています。未成年者に対する年齢確認や保護措置の実効性についても、司法長官側は詳細な説明を求めており、プラットフォームとしての責任を問う姿勢を明確にしています。
OpenAIの公式見解と法的圧力の広がり
OpenAIは今回の調査について、「AIは強力な新技術であり、利用者の利益のために責任を持って安全に活用するよう日々取り組んでいる」と声明を発表し、各州司法長官の懸念に建設的に対応する意向を示しました。ただし、調査の個別論点への反論や詳細な説明は行っていません。
同社はすでに2026年6月1日、フロリダ州からSam Altman CEOを含む形で訴訟を提起されており、今回の複数州による調査はその10日余り後に発表されたものです。短期間に法的圧力が重なって生じていることは、AI企業に対する規制当局の姿勢が明確に変化しつつあることを示しています。AI規制の在り方については、AnthropicのCEOが提言した航空機並みのAI安全審査制度をはじめ、業界全体で安全性と説明責任の議論が本格化しています。
規制強化の流れと今後の影響
今回の調査は、米国でAI規制が連邦レベルから州レベルへと広がりつつある流れの中に位置づけられます。連邦議会でのAI規制立法は依然として進みが遅く、各州の司法長官が独自に動くことで企業に対する実質的な圧力を生み出しています。消費者保護や未成年者向けデジタルサービスに対する規制は州法が先行しやすい領域であり、今後ほかの州が調査に加わる可能性があります。また、連邦取引委員会(FTC)など連邦機関が同調して動くかどうかも業界全体の規制環境を左右する注目点です。
OpenAIにとって、複数州の調査に個別に対応するコストは無視できません。召喚状への対応過程で開示が求められる内部文書には、広告ターゲティングの仕組みやデータ利用ポリシーの詳細など、これまで公開されていなかった情報が含まれる可能性があります。ChatGPTを業務利用する企業や開発者にとっても、データ取り扱い方針や利用規約の変更が波及する可能性を念頭に置いておく必要があります。
