- 2026年4月までの4カ月間で、Samsungの半導体技術者200人超がSK Hynixへ移籍したと報じられました
- 賞与格差が主因で、SK Hynixは1人あたり約47.6万ドル、Samsungのファウンドリ部門は約13.5万ドルにとどまります
- Samsungのファウンドリ部門は81.5%が2年以内の転職を希望し、韓国全体でも人材不足が深刻化しています
4カ月で200人超が移籍
米MIT Technology Reviewは2026年7月28日、韓国Samsung Electronicsの半導体部門から、競合のSK Hynixへ技術者の移籍が相次いでいると報じました。同社の労働組合によると、2026年4月までの過去4カ月間で、組合員200人以上がSK Hynixへ移ったとされています。
流出の勢いを示す証言も紹介されています。2026年7月のSK Hynixの求人募集では、あるチームで30人のうち2人のリーダーを除く全員が応募したといいます。個人の転職にとどまらず、チーム単位で人材が抜ける動きが起きている点が特徴です。
賞与格差が引き金に
移籍の主な動機として挙げられるのが、賞与の大きな格差です。SK Hynixは2026年度、従業員1人あたり約47.6万ドルの賞与を支給しました。これは営業利益の10%を原資とし、多くが現金で配分される仕組みです。
一方、Samsungのメモリ部門は約40万ドルですが、赤字が続くファウンドリ(半導体の受託製造)部門は約13.5万ドルにとどまります。賞与が部門ごとの業績に連動するため、同じ会社のなかでも3倍以上の開きが生じています。この差が、業績好調なSK Hynixへ人材を引き寄せる直接の要因になっています。

HBM好況が生む人材需要
この構図の背景にあるのがAIブームです。生成AIの計算を担うNVIDIAのAIアクセラレータには、高帯域幅メモリ(High Bandwidth Memory、HBM)と呼ばれる高速メモリが欠かせません。SK HynixはこのHBM市場で世界首位に立ち、需要の急増を業績と賞与の両面で取り込んでいます。
好況の恩恵は数字にも表れています。両社とも2026年5月に時価総額1兆ドルを突破し、SK Hynixは6月に韓国で最も価値のある企業の座を一時的に獲得しました。AIインフラ全体が急拡大するなかで生じる副作用という点では、AIデータセンターによる電力網への負荷と通じる面があります。好況が資源の奪い合いを生み、今回はそれが人材という形で表面化しました。
引き止めと法的措置
Samsung側も対応を進めています。同社は今後5年間で6万人を新規採用する計画を掲げ、人材基盤の立て直しを図る構えです。ただし賞与格差という根本要因が残るかぎり、採用だけで流出を止めるのは容易ではありません。
法的な歯止めも動いています。韓国の裁判所は、半導体技術が国家中核技術にあたるとして、ある技術者に対しSK Hynixへの転職を18カ月間制限する差止命令を認めました。技術流出の懸念が、個人の転職の自由と衝突する場面が出ています。
韓国半導体の人材不足
争奪戦の土台には、構造的な人材不足があります。SK Hynixは2026年上半期だけで2,152人を新規採用し、5年以内に製造能力を倍増させる計画を進めています。両社ともに大量採用を続けても、供給が需要に追いつきにくい状況です。
韓国の半導体業界全体では、2031年までに約30.4万人の人材が必要とされる一方、約5.4万人が不足する見通しです。Samsungのファウンドリ部門では81.5%が2年以内の転職を希望し、半導体部門全体でもほぼ50%が同様の意向を示しています。AI需要が続くかぎり、人材をめぐる競争は今後も業界の課題であり続けそうです。
