- OpenAIが初の物理ハードウェア「Micro」を230ドルで発売。ChatGPTとCodexのセッションを専用キーに割り当てて切り替えられるキーパッド型のデバイスです
- 6つのエージェントキーと6つのコマンドキー、音声入力を備え、白・青・緑・赤のLEDで待機や処理中、完了、エラーといった状態を一目で把握できます
- 専門キーボードメーカーWork Louderと共同開発。開発者には便利な一方、一般利用者には用途が伝わりにくいとの厳しい声も出ています
OpenAIが初のハードを発売
OpenAIが2026年7月、同社として初となる物理ハードウェア製品「Micro」を発売しました。価格は230ドル(約3万6000円)で、机の上に置いて使うキーパッド型のデバイスです。ソフトウェア企業として知られるOpenAIが、自社の対話AI「ChatGPT」やエージェント型のコーディング支援ツール「Codex」を手元のキーで直接操作する、実物のデバイスへ踏み出した点が特徴です。
Microは専門的なキーボードを手がけるメーカーWork Louderと共同で開発されました。パソコンとはBluetoothまたはUSBケーブルで接続し、ChatGPTアプリ内の専用タブ「Micro」から設定を行う仕組みです。なお今回のTechCrunchの実機レビューでは、販売地域や量販店での取り扱いといった具体的な販売チャネルには触れられておらず、現時点では入手経路が限られる可能性があります。
Microでできること
Microの上部には、表面がすりガラス状に加工された6つのエージェントキーが並びます。ここにChatGPTやCodexの各セッションを割り当てておくと、キーを押すだけで作業対象を素早く切り替えられます。その下には、指示の送信や操作を担う6つのコマンドキーを配置しています。
音声入力にも対応しており、専用のボタンを押しながら話しかけることでタスクを口頭で指示できます。話し終えたら送信ボタンで確定する流れです。キーの明るさは調整でき、色分けされたLEDで作業の進み具合を示します。

状態表示はシンプルです。待機中は白、AIが考えている最中は青、処理が完了すると緑、エラーが起きた場合は赤に光ります。画面をのぞき込まなくても、キーパッドの色を見るだけで複数の作業の状況を把握できる設計です。
開発者向けの実用性
このデバイスが想定する主な利用者は、コードを大量に書く開発者やChatGPTを頻繁に使うヘビーユーザーです。複数のプロジェクトを同時に進める開発者にとって、画面上でタブやウィンドウを行き来してセッションを切り替える手間は小さくありません。Microはその操作を物理キーに置き換え、切り替えの負担を減らすことを狙っています。
OpenAIがChatGPTを対話画面の外へ広げようとする動きは、これが初めてではありません。同社は医療記録と連携するChatGPTの新機能「Health」を米国で提供するなど、AIを日常の作業や生活へ組み込む取り組みを重ねており、今回のハードウェア参入もその延長線上に位置づけられます。
冷ややかな反応も
もっとも、市場の受け止めは好意的なものばかりではありません。掲示板サイトRedditの利用者からは「悪ふざけで、まともな製品とは思えない」といった否定的な声が多く上がりました。小規模な独立系メディアAftermathのレビューは「私を狙って苛立たせるために設計された」という辛辣な見出しを掲げ、より安価な自作の代替手段があると指摘しています。
実際に試したTechCrunchの記者も、設定を終えるまでには一定の学習コストがかかると認めています。標準的なキーボードやマウスと比べて、Microが持つ実用上の優位性がどこまであるのかは疑問が残るとしつつ、いったん使いこなせれば「かなり楽しい」とも述べており、評価は分かれています。
ハード参入が示す戦略
Micro単体の売れ行き以上に注目されるのは、ソフトウェア中心だったOpenAIがハードウェア領域へ足を踏み入れたという事実です。同社は元Appleのデザイナーであるジョニー・アイブ氏の企業を取り込むなど、AI時代の新しいデバイスを探る動きを見せてきました。今回のキーパッドは、その戦略を占う小さな一歩と見ることができます。
230ドルというMicroの価格と、開発者に絞った用途を踏まえると、これは幅広い層を狙った製品というより、熱心なユーザー向けの実験的な位置づけに近いといえます。OpenAIがこの経験を、より多くの人に届くAIデバイスへどうつなげていくのかが、今後の焦点になりそうです。
