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AI-Papers

IBMが時系列基盤モデルGranite PatchTST-FM-r2を公開、商用利用も可能

IBMが時系列基盤モデルGranite PatchTST-FM-r2を公開、商用利用も可能
  • IBM Research が約3億8500万パラメータの時系列基盤モデル Granite PatchTST-FM-r2 を Hugging Face で公開した
  • GIFT-Eval のゼロショット再現可能モデル部門で CRPS 0.467、MASE 0.6846 といずれも2位、寛容ライセンス勢では1位
  • Apache 2.0 と OpenMDW 1.0 のデュアルライセンスで、需要予測や異常検知への商用利用が可能

公開されたモデルの概要

IBM Research は2026年9月、時系列予測向けの基盤モデル Granite Time Series PatchTST-FM-r2 を Hugging Face Hub で公開しました。パラメータ数は約3億8500万で、最大8192ステップの文脈を入力として受け取れます。

基盤モデル(Foundation Model)とは、大規模な事前学習によって多様な下流タスクに転用できるようにしたモデルを指します。時系列分野でも、個別のデータセットごとにモデルを学習し直すのではなく、学習済みモデルをそのまま当てはめるゼロショット予測が実用段階に入りつつあります。

予測は点推定にとどまらず、99分位点の確率的な出力に対応します。これにより予測値の不確実性を区間として扱えるため、在庫計画や設備の余力設計のように、外れたときのコストを見積もる必要がある業務と相性が良い設計になっています。欠損値の補完(imputation)にも対応します。

conformer ブロックによる構成

アーキテクチャの中核は conformer ブロックです。マルチヘッド自己注意(Multi-Head Self-Attention)と時間方向の畳み込みを1つのブロック内で組み合わせ、離れた時点どうしの関係と、直近の局所的な変動の両方を捉えます。ブロックは30層積み重ねられ、畳み込みのカーネルサイズは5, 5, 3, 3 を交互に配置しています。

入力の分割にも工夫があります。時系列を一定長のパッチに切り出す際に隣接パッチを半分ずつ重ね、Hamming 窓で重み付けした上で、予測時には overlap-and-add によって重なり部分を足し合わせます。パッチ境界で予測値が不連続に飛ぶ問題を抑える狙いです。

図1: Granite PatchTST-FM-r2 の処理の流れ
図1: Granite PatchTST-FM-r2 の処理の流れ

図1のように、入力から予測出力までが1本の経路でつながっており、対象データごとの再学習を前提としない構成です。長い文脈を効率的に扱う工夫は、文脈を圧縮して精度を保つ手法のように大規模言語モデル側でも進んでおり、系列長への対処という点で問題意識は共通しています。

GIFT-Eval での評価結果

評価には時系列基盤モデルの標準ベンチマークである GIFT-Eval が用いられました。2026年9月8日時点のリーダーボードにおける、ゼロショットかつ再現可能なモデルの部門での順位は次の通りです。

指標

スコア(幾何平均)

順位

CRPS

0.467

2位

MASE

0.6846

2位

CRPS は確率予測の当たり具合、MASE は素朴な予測を基準にした誤差の比率を表す指標で、いずれも小さいほど良い値です。寛容なライセンスで配布されているモデルに限れば、両指標とも1位でした。

事前学習済みモデルを含む再現可能モデル全体との比較では、CRPS が3位、MASE が4位という位置づけになります。IBM は Chronos-2、Timer-S1、Toto の各派生モデルを上回ったと説明しており、対抗馬にはより規模の大きいモデルも含まれます。パラメータ数の大きさだけが精度を決めるわけではないことを示す結果といえます。

学習データとライセンス

学習に使われたコーパスは4系統から構成されます。GiftEvalPretrain のデータセット群、独自の KernelSynth による合成データ、GIFT-Eval に含まれないデータセットから TSMixup で生成したコーパス、そして長さ4096の CauKer 合成系列およそ50万本です。評価対象データの混入を避ける方針が明示されている点は、ベンチマーク結果を読む上で重要な情報です。

ライセンスは Apache 2.0 と OpenMDW 1.0 のデュアル構成で、研究用途と商用利用の双方に幅広い権利が与えられます。時系列基盤モデルは配布条件が研究用途に限定される例もあるため、社内システムへの組み込みを検討する企業にとっては採用のハードルが下がります。

想定される適用領域

IBM が挙げる適用先は、需要予測、価格予測、エネルギー、交通、機器テレメトリの各領域です。いずれも周期性とノイズが混在し、学習データを個別に整備するコストが課題になりやすい分野にあたります。

利用は pip install "granite-tsfm>=0.3.9" でライブラリを導入し、パイプラインを組み立てるだけで始められます。学習処理を経ずに予測を得られるため、既存の統計的手法との比較検証を小さく回しやすい構成です。まずは手元のデータでゼロショット精度を確かめ、必要に応じて微調整を検討する進め方が現実的でしょう。

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