- Claude Mythos PreviewがFirefoxの271件のバグを特定し、うち180件が「高」重大度と評価された
- 月次のセキュリティ報告数は2026年4月に423件に達し、2025年下半期の月17〜31件から大幅に増えた
- 20年以上前のXSLT関連バグを含む長年の未解決問題も検出、修正はFirefox 150に取り込まれた
Claude Mythos Previewとは
Anthropicが開発した「Claude Mythos Preview」は、同社の一部パートナーに限定公開されている最新AIモデルです。汎用的な対話や文章生成にとどまらず、大規模ソフトウェアのコード解析に特化した能力を備えています。MozillaはそのアーリーアクセスをFirefoxのセキュリティ評価に活用しました。
Mozillaは以前からAIを用いたバグハンティングに取り組んできましたが、Claude Mythosの導入によってその規模と精度が大きく向上したとしています。オープンソースのコードベースに対してAIが深い解析を行うことで、これまで人手だけでは発見できなかった脆弱性の組み合わせも検出できるようになりました。
271件のバグ発掘と重大度別の内訳
Claude Mythosが特定したバグは合計271件で、その修正はFirefox 150に取り込まれました。重大度別の内訳は次のとおりです。
- 高: 180件
- 中程度: 80件
- 低: 11件
「高」に分類されたバグは、悪用された場合にユーザーへの直接的な被害につながるリスクがあり、優先的な修正対象となりました。これらの修正には100人以上の開発者によるコード変更が必要だったとされています。
月次修正件数が15倍超に跳ね上がった経緯
Mozillaのセキュリティ報告数は、2025年下半期には月17〜31件程度で推移していました。その後の推移は次の表のとおりです。
時期 | セキュリティ報告数(月) |
|---|---|
2025年下半期 | 17〜31件 |
2026年2月 | 61件 |
2026年3月 | 76件 |
2026年4月 | 423件 |
Claude Mythosを本格活用した2026年4月の423件は、過去最高の水準です。2025年下半期の17〜31件と比べると、15倍を超える増加になります。
この急増の背景には、AIが静的解析やコードレビューを自動化するだけでなく、人間のレビュアーが見落としがちな関数間の依存関係や境界値条件を体系的に検証できる点があります。従来のファジング(プログラムにランダムな入力を与えてクラッシュを誘発する検査手法)と組み合わせた検査も行われました。
20年超の未解決バグも発掘
今回の結果で目を引くのは、XSLT(XML文書をHTMLや他の形式に変換するためのXML関連技術)に起因する20年以上前のバグや、HTMLの legend 要素に潜む長年の問題が検出された点です。
これらは既存のテストスイートでは再現条件が複雑すぎて発見されず、長期間コードベースに残っていました。AIがコードを横断的に解析することで、こうした古くからの技術負債の掘り起こしが可能になったといえます。AlphaEvolveがGeminiを活用して数学やチップ設計の実問題を自律解決した事例と同様に、AIが実際の開発インフラに対して定量的な成果をもたらした事例として位置づけられます。
オープンソース開発への影響
Mozillaの取り組みは、商用製品だけでなくオープンソースプロジェクトでもAIがセキュリティ品質管理の主力ツールになりえることを示しています。100人以上の開発者による変更を要する規模の修正を、4月には423件の報告という水準で扱えたことがその例です。
一方で、修正の最終判断や、変更が別の問題を引き起こさないかを確認するリグレッションテストは、依然として人間の判断を要します。AIとエンジニアが役割を分担しながら品質管理のサイクルを速める体制が、今後のオープンソース開発で広がっていく可能性があります。