- Artificial Analysis が Intelligence Index を v4.2 に更新し、非公開テストデータの比重を全体の40%へ引き上げた
- 知識労働タスクの AA-Briefcase と PDF 読解の GDP.pdf を追加し、スコアが飽和した GPQA Diamond を除外した
- 更新後の首位は Claude Fable 5.1、次いで GPT-6 Astra が続き、指標の上位帯は僅差で並んでいる
v4.2で何が変わったか
AI モデルの性能を横断比較する調査会社 Artificial Analysis は9月4日、複合指標「Intelligence Index」を v4.2 に更新しました。同社は更新の狙いを、より複雑で現実的なタスクの評価を加え、非公開のテストデータの比重を高めることで指標の「ゲーム化」を防ぐことだと説明しています。ここでいうゲーム化とは、モデル開発側が評価用データの傾向に合わせて調整し、実力以上のスコアを得てしまう状態を指します。
今回の改訂で追加されたのは、知識労働を対象とする AA-Briefcase と、PDF ファイルの読み取り能力を測る GDP.pdf の2つです。一方で GPQA Diamond はスコアが飽和したため、指標本体から外され「Legacy Evaluations」に移されました。上位モデルが軒並み高得点を取る評価は、モデル間の差を説明する力を失うためです。
10個の評価と重み
v4.2 は10個の評価を4つのカテゴリに分けて集計します。エージェント能力とコーディング、汎用能力、科学的推論という区分で、それぞれの重みは次のとおりです。
カテゴリ(合計) | 評価 | 重み |
|---|---|---|
Agents(30%) | AA-Briefcase | 15% |
Agents(30%) | GDPval-AA v2 | 10% |
Agents(30%) | τ³-Banking | 5% |
Coding(20%) | Terminal-Bench v2.1 | 10% |
Coding(20%) | SciCode | 10% |
General(30%) | AA-Omniscience | 15% |
General(30%) | GDP.pdf | 10% |
General(30%) | AA-LCR v1.1 | 5% |
Scientific Reasoning(20%) | HLE | 10% |
Scientific Reasoning(20%) | CritPt | 10% |
新設の AA-Briefcase が単独で15%と最大級の重みを持ち、数週間規模の知識労働プロジェクトを想定した課題を扱います。GDPval-AA も v2 で採点方式が変わり、単一の判定モデルではなく3つのフロンティア LLM を判定役に使い、人間の専門家の成績を1000とする Elo に紐づける形になりました。
非公開データを倍増した理由
非公開データが指標全体に占める比重は40%となり、v4.1 の2倍に増えました。同社は次期 v5 でこの比率をさらに高める方針も示しています。公開データセットで運用される評価は AA-Omniscience、HLE、CritPt、Terminal-Bench v2.1、SciCode などで、新設の AA-Briefcase は業界の専門家が用意した実データ・拡張データ・合成データを組み合わせており、全体が公開されるわけではありません。
公開ベンチマークは検証しやすい反面、問題文や解答がそのまま学習データに混入する汚染のリスクを抱えます。評価データの一部を手元に残す設計は、この問題への現実的な対処として広がりつつあります。指標全体の95%信頼区間は10回以上の反復に基づき±1%未満と見積もられていますが、個別の評価はこれより幅が広くなる可能性があるとされています。
上位モデルのスコア
更新後のリーダーボードでは Anthropic の Claude Fable 5.1 が首位に立ち、OpenAI の GPT-6 Astra が続きます。ITmedia の報道によれば、GPT-6 Astra は前バージョンから4ポイント上昇し、他のモデルと比べて出力トークンの効率が高いと評価されました。
モデル(設定) | Intelligence Index |
|---|---|
Claude Fable 5.1(max with fallback) | 57 |
Claude Fable 5.1(xhigh with fallback) | 56 |
GPT-6 Astra(max) | 55 |
Claude Opus 5(max) | 54 |
上位帯の差は数ポイント以内に収まっており、順位そのものよりも、どのカテゴリで点を稼いでいるかを見る方が実務では役に立ちます。推論の深さを指定する設定違いで2〜3ポイント動く点も、比較の際には押さえておきたいところです。
指標をどう読むか
Intelligence Index はテキスト中心の英語評価として設計されており、画像入力や音声入力、多言語性能は別のベンチマークで測られます。日本語での運用や画像処理が主目的なら、この指標だけで判断するのは適切ではありません。
それでも、評価項目の入れ替えと非公開データの拡大という今回の変更は、ベンチマークの寿命が短くなっている現状をよく表しています。飽和した評価を外し、実務に近いタスクへ重心を移す動きは、モデル選定の判断材料としての指標の位置づけを保つための調整だと言えます。