- OpenAIがGPT-6ファミリーの実践ガイドを公開し、Astra、Sol、Lunaの使い分けを用途別に提示
- reasoning effortは4段階、fastとultrafastの速度モードも用途ごとに選択する設計
- キャッシュ済み入力トークンは最大95%安く、成功1件あたりのコストで評価する運用を推奨
3モデルの性格の違い
OpenAIは、GPT-6ファミリーを実務で動かすための実践ガイドを公開しました。内容は「本番で効果的に動かす」「プロンプトとスキルを調整する」「長時間タスクを最適化する」の3部構成で、ベンチマーク比較ではなく設定の選び方に焦点を置いています。
出発点になるのがモデルの使い分けです。ガイドは3つの系統にそれぞれ異なる役割を割り当てています。
モデル | 想定用途 |
|---|---|
GPT-6 Astra | 最大の知能を要する最難関の推論作業 |
GPT-6.1 Sol | 複雑なコーディング、リサーチ、コンピュータ操作。マルチエージェント委任(ベータ)に対応 |
GPT-6 Luna | 請求書項目の抽出、問い合わせ分類、構造化要約など目標が明確な反復作業 |
請求書の項目抽出のように正解が決まっている処理に最上位モデルを充てても、得られるのは単価の上昇が中心です。ガイドの構成は、タスクの難しさに合わせて軽いモデルから検討するという考え方を前提にしています。
推論強度と速度モード
API利用時はreasoning effortを4段階から選べます。lowは事実の抽出や小さな編集といった定型処理、mediumは機能の計画や選択肢の比較のように判断を伴う作業が対象です。highは難しいデバッグ、踏み込んだ分析、慎重なレビューに充て、highでも足りない場面のためにextra high(max)が用意されています。
応答速度にも選択肢があります。fastモードはトークン単価が上がる代わりに応答時間が速く安定するため、チャットのような対話型の用途に向きます。さらに高速なultrafastはGPT-6 Astraのみで利用できます。
本番前に測る3つの値
ガイドは、デプロイ前に代表的なタスクで評価を回し、次の指標を取ることを求めています。
- タスク成功率
- レイテンシ
- 成功1件あたりのコスト
単価ではなく成功1件あたりで見る点が要点です。安いモデルでも失敗とリトライが重なれば実効コストは逆転しますし、推論強度を上げた方が合計で安く済む場合もあります。コスト側の打ち手としては、プロンプトキャッシュと文脈のコンパクション(会話履歴を必要な状態だけ残して圧縮する処理)が挙げられており、キャッシュ済み入力トークンはモデルによって非キャッシュ比で最大95%安くなります。
プロンプトとスキルの調整
プロンプト側の指針は4点に整理されています。第一に、成果物、読者、制約、完了条件を明示した指示を与えること。第二に、逐一の承認を求める代わりに判断の境界を決めることです。使い捨てデータでのローカルテストのように本番環境に触れない定型作業は許可し、影響の大きい判断にはレビューを必須とする形が例に挙げられています。
第三に、モデルが自分で決めてよい選択と人間に確認すべき選択を区別すること。第四に、実装、実行、検査、失敗時の修復のどこまでを「完了」と呼ぶかを定義することです。自律範囲を広げる設計では、外部から読み込んだ内容が指示として扱われるプロンプトインジェクションへの備えも併せて検討が必要になります。
スキルについては、説明を短く保ち、いつ実行すべきかを明示する書き方が推奨されています。補足情報は必要になった時点で読み込ませ、手順を固定したレシピではなく柔軟な指針として書く形です。AGENTS.mdも、どの文書やテストがどんな場面で関係するのかを説明する内容に更新するよう促しています。
長時間タスクを速くする
実行に時間がかかるタスク向けには3つの仕組みが紹介されています。Responses WebSocket APIを使った途中指示では、タスクが走っている最中に指示を足せます。追加分はキューに入るため、進行中の処理をキャンセルしません。
非同期のツール呼び出しは、遅い処理の完了を待つ間に独立した作業を進める手段です。GPT-6.1 Solではマルチエージェント委任も使え、依存関係のないサブタスクを専門エージェントに振り分け、結果をまとめて1つの回答に統合します。

図1のように、3つはいずれも待ち時間を別の作業で埋める発想で、組み合わせて使う前提になっています。
コンピュータ操作の使い分け
Astra、Sol、Lunaは、APIを持たないWebサイトやデスクトップアプリを画面経由で直接操作できます。ブラウザ制御にはPlaywright、デスクトップアプリにはPyAutoGUIが例示されています。
ただしガイドは、APIや接続済みツールで直接処理できるならそちらを使うべきだとしています。画面を読み取る、操作する、フォームを埋めるといった代替手段のない場面に限る、という整理です。運用面では、デプロイ前にタスク成功率とレイテンシの基準値を取り、用途に応じた挙動の監視とデータ管理を用意することが前提条件として挙げられています。