- EndavaはChatGPT EnterpriseとCodexを全社展開し、コーディングから文書化までをAIエージェントが担う新たな開発体制を構築した
- Codexは非同期でコード生成・テスト作成・ドキュメント更新を処理し、開発者は意思決定と品質検証に注力できる環境を実現した
- ツール導入にとどまらず、AIを前提とした開発文化を組織全体で醸成する「AIファースト」変革の事例として公開された
Endavaが直面していた課題
Endavaは英国ロンドンに本社を置くグローバルなITサービス企業で、欧州・南米・北米を中心に約3万人規模のエンジニア集団を擁する受託開発会社です。金融・医療・小売など多岐にわたる業界の顧客に対し、アジャイル手法に基づいたソフトウェアデリバリーを提供しています。
近年、生成AIの急速な普及により、顧客からは「より速く、より品質の高いソフトウェアを、より低いコストで」という要求が強まっていました。既存の人海戦術による開発モデルは限界に近づきつつあり、Endavaは組織全体で新たな生産性基盤を確立する必要がありました。
ChatGPT Enterpriseの全社展開
Endavaが選択したのは、OpenAIのChatGPT Enterpriseの全社導入です。ChatGPT Enterpriseは企業向けにセキュリティとプライバシーを強化したバージョンで、会話データがモデルの追加学習に利用されない点や、管理者向けの利用状況ダッシュボードが標準搭載されている点が特徴です。
Endavaのエンジニアたちはこのプラットフォームを使い、要件定義の整理・アーキテクチャの議論・コードレビューの補助・技術文書の草稿作成など、従来は人手に依存していた知識業務を効率化しています。特に、異なるタイムゾーンに散らばるチーム間でのナレッジ共有や、プロジェクト文書の統一フォーマット化に大きな効果を上げたとされています。
Codexが変えたデリバリーの流れ
今回の変革の核心に位置するのが、OpenAIのCodexです。Codexは自然言語の指示をもとにコードを生成・編集・テストできるAIエージェントで、開発者が直接操作せずとも非同期でタスクを実行できます。
従来のソフトウェアデリバリーでは、新機能の追加時にコード実装・単体テストの作成・APIドキュメントの更新という一連の作業がエンジニアの手に委ねられていました。EndavaはこのフローにCodexを組み込み、定型的なコード生成・テストケース作成・ドキュメント更新をAIエージェントに委譲しています。エンジニアはCodexが出力したプルリクエストを確認・マージする役割に軸足を移し、アーキテクチャ設計やビジネスロジックの判断に集中できる体制を確立しました。
さらに、Codexのエージェントが並行して複数のタスクを処理できる特性を活かし、開発者1人あたりが並行管理できるタスク数が大幅に増加しています。これにより、チームのスループット全体が底上げされ、デリバリーサイクルの短縮につながっています。

組織文化としての「AIファースト」
Endavaのこの取り組みが単なるツール導入と異なる点は、開発文化そのものを再定義しようとしている点にあります。同社は「AIエージェントを使いこなすことが現代のエンジニアリングスキルだ」という考えを組織全体に浸透させ、AIと協働するための社内研修プログラムを整備しています。
AIエージェントに適切な指示(プロンプト)を与え、出力を評価し、フィードバックするスキルは、OpenAIがCodexを全ナレッジワーカー向けに拡張している背景とも一致します。Endavaはこのスキルを「AIオーケストレーション能力」として位置づけ、採用・育成の基準に組み込みはじめています。
また、AIが生成したコードの品質保証体制も並行して整備されており、レビュープロセスの標準化や自動テストカバレッジの基準引き上げを進めています。AIを活用しながらも品質の最終責任は人間が持つという明確な役割分担が、信頼性の高いデリバリーを支えています。
エンタープライズ導入への示唆
Endavaの事例が示すのは、エンタープライズにおけるAI導入の成否が「どのツールを選ぶか」よりも「どう組織に根付かせるか」に左右されるという点です。同社は段階的な展開計画を立て、実際のデリバリー業務の中でAIエージェントの効果を検証しながら範囲を広げてきました。
受託開発という性質上、顧客ごとに異なる技術スタックやセキュリティ要件への対応が求められるEndavaにとって、ChatGPT Enterpriseのプライバシー設計とCodexの柔軟なコーディング能力は、多様なプロジェクト要件を満たす組み合わせとして機能しています。今後、AIエージェントが担う工程の範囲はさらに広がると見られており、Endavaはその先行事例として業界全体に参照される存在となりました。