- Character.AIは2026年10月13日にChapter 11を申請し、資産・負債は5000万〜1億ドルの範囲と報告された
- Disneyは一部資産を2000万ドルで取得し、少なくとも60名の従業員に年間報酬計6000万ドル規模で雇用を提示
- 高コスト構造に加え、未成年保護をめぐる訴訟と規制対応の負担が破綻の要因として法定書類に記載された
Chapter 11申請の経緯
対話型チャットボットサービスを運営するCharacter.AIが、2026年10月13日に米連邦破産法第11章(Chapter 11、事業を続けながら再建や資産売却を進める手続き)を申請しました。裁判所提出書類によると、資産と負債はいずれも5000万ドルから1億ドルの範囲とされています。
同社はすでに、一部資産をDisneyへ2000万ドルで売却することで合意しています。この売却にはDisneyへの非独占かつ永続的な技術ライセンスも含まれます。
ただし今回の合意はストーキングホース入札(最低価格を示す先行入札)であり、より高い条件を提示する企業が現れれば売却先は変わります。売却完了は11月末から12月初旬が見込まれ、それまでサービスは稼働を続けます。CEOのColin Adamsは、実行可能な入札が得られなければ「プラットフォームは縮小して停止される」と述べています。

図1のように、Disneyへの売却と従業員の移籍が並行して進む一方で、プラットフォーム自体の存続は入札の有無に左右される構図になっています。
Disneyが引き受ける人材
10月18日にBloombergが確認した法定書類では、Disneyが少なくとも60名のCharacter.AI従業員に雇用を提示し、その年間報酬の合計は推定6000万ドルに達すると記されています。これは同社の従業員の過半数にあたり、オファーを受けた「大多数」が受諾したとされます。
元CEOのKarandeep Anandは、Disneyにとって初のCTO(最高技術責任者)に就任しました。先月Disneyへ移った元従業員とAnandは、移行作業の支援を担います。Disneyは2025年10月にCharacter.AIへ警告書を送り、自社キャラクターを模した対話の削除を求めた経緯があり、そのわずか1年後に開発チームを丸ごと迎える形になりました。
資金と事業規模の推移
Character.AIは2021年後半にGoogleの元エンジニアであるNoam ShazeerとDaniel De Freitasが設立し、Lightspeed、a16z、Greycroft、SV Angelなどから累計1億9300万ドル超を調達しています。2022年9月には1億5000万ドルの資金調達でユニコーン企業となりました。
2024年8月にはGoogleが27億ドルを支払って同社のモデルをライセンスし、創業者2人はGoogleへ戻りました。主要な金額を整理すると次のようになります。
項目 | 金額 |
|---|---|
Googleによるモデルライセンス(2024年8月) | 27億ドル |
累計調達額 | 1億9300万ドル超 |
申請時の資産・負債 | 各5000万〜1億ドル |
Disneyの資産取得額 | 2000万ドル |
移籍従業員の年間報酬(推定) | 6000万ドル |
破綻の要因は高コストと訴訟
法定書類は、破綻の要因として高いコストを挙げています。利用者側の指標は悪くありませんでした。2024年10月時点で月間アクティブユーザーは2000万人に達し、サービス開始初期には1日平均2時間を超える利用時間が記録されるなど、滞在時間の長いアプリとして知られていました。それでも推論コストの上昇に収益化が追いつかず、「大規模で熱心なユーザー基盤」を抱えたまま資金が続かない状況に陥りました。
書類はさらに、訴訟に関連する潜在的な債務と規制対応の負担にも言及しています。同社が直面してきた主な法的・規制上の出来事は以下の通りです。
- 2024年10月、14歳の少年の死をめぐり遺族が提訴
- 2024年12月、テキサス州が児童のプライバシーと安全性について調査開始
- 2025年11月、子ども向けに自由対話をやめ「Stories」形式へ移行
- 2026年1月、一部訴訟で和解し未成年の利用を禁止
未成年の利用を禁じた措置は安全面の要請に応える一方、滞在時間の長い利用者層を自ら手放す決定でもありました。
消費者向けAIへの示唆
今回の件は、利用者数と滞在時間が伸びても、推論コストと法的リスクを吸収できなければ事業として成立しないことを示しています。コスト構造の見直しは業界全体の課題で、開発プラットフォームのReplitが基盤モデルの切り替えを行った例のように、採用するモデルの選択が収益性を直接左右する局面が増えています。
一方、Disney側から見れば2000万ドルの資産取得と年間6000万ドル規模の人件費で、対話AIの開発チームと技術ライセンスをまとめて確保したことになります。人材と技術だけが大手に移り、サービスとユーザーは残らない可能性がある取引であり、消費者向けAIスタートアップの出口の一つの形といえます。
