- Zhipu AIが744Bパラメータ(MoE構成で40Bアクティブ)のGLM-5をMITライセンスで完全公開
- SWE-bench Verifiedで77.8%を記録しオープンソースモデル1位、Claude Opus 4.5を上回るスコアも達成
- API価格は入力$0.50/1M tokens、出力$1.50/1M tokensでClaude Opusの約6分の1を実現
中国のAI自立戦略の象徴として登場
中国のAI企業Zhipu AIは2025年2月11日、744Bパラメータ規模のオープンソース大規模言語モデル「GLM-5」を公開しました。このモデルは完全にMITライセンスで提供され、商用利用も無制限に許可されています。
GLM-5の最大の特徴は、Mixture of Experts(MoE)アーキテクチャを採用している点です。総パラメータ数は744Bですが、実際に推論時にアクティブになるのは40Bのみです。
MoEでは全パラメータが常時動作せず、入力に応じて最適な40Bの専門家ネットワークが選択される仕組みになっています。この設計により、超大規模モデルの性能を保ちながら推論コストを大きく削減しました。
GLM-5は米国製GPUを使わず、Huawei Ascendチップのみで学習されています。米中の技術摩擦を背景とした中国のAI自立戦略の成果と言えます。
主要ベンチマークで最高水準の性能を記録
GLM-5は複数の主要ベンチマークで優れた性能を示しています。ソフトウェアエンジニアリングタスクを評価するSWE-bench Verifiedでは77.8%のスコアを記録し、オープンソースモデルとして1位を獲得しました。
比較対象となる他のオープンソースモデルとのスコア差は、次の表のとおりです。
モデル | SWE-bench Verified |
|---|---|
GLM-5 | 77.8% |
Meta Llama 3.1 405B | 73.2% |
Mixtral 8x22B | 68.9% |
GLM-5はこれらを明確に上回る性能を示しました。
さらに、高度な推論能力を測定するHumanity's Last Examでは、ツール使用モードでGLM-5が82.3%を記録しています。これはClaude Opus 4.5の81.7%、GPT-5.2の81.4%を上回る結果です。幅広い領域で商用最高峰モデルと同等以上の能力を持つことが実証されました。
幻覚率(hallucination rate、事実でない内容を生成する割合)の低さもGLM-5の強みです。Zhipu AIによれば、独自の強化学習手法「Slime」を採用することで、事実に基づいた正確な回答生成を実現しています。
独自のRL手法「Slime」が精度向上を支える
GLM-5の高い精度を支えているのが、Zhipu AIが開発した強化学習手法「Slime」です。従来のRLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback、人間の評価をもとにモデルを調整する手法)とは異なるアプローチを採用しています。
Slimeは、モデルが生成した回答の正確性を多角的に評価し、誤った情報を含む回答にペナルティを与える仕組みを持ちます。これにより、モデルは不確実な情報を生成するリスクを学習し、より慎重で正確な回答を生成するようになりました。
この手法はコーディングタスクや専門知識が必要な質問応答で効果を発揮しています。SWE-bench Verifiedでの高スコアも、Slimeによる精度向上が大きく寄与していると考えられます。
APIコストはClaude Opusの約6分の1
GLM-5のもう一つの大きな魅力は、API提供価格の安さです。Zhipu AIは商用API経由でのアクセスも可能にしており、その価格設定は他の商用モデルを大きく下回ります。
GLM-5とClaude Opus 4.5のAPI価格を並べると、次の表のとおりです。
項目 | GLM-5 | Claude Opus 4.5 |
|---|---|---|
入力(1M tokens) | $0.50 | $3.00 |
出力(1M tokens) | $1.50 | $15 |
GLM-5は入力で6分の1、出力では10分の1のコストに収まっています。性能面でClaude Opusと同等以上のスコアを示しながら、費用は大幅に低く抑えられました。この価格設定は、大規模なLLM活用を検討する企業にとって有力な選択肢となります。
加えて、MITライセンスによる完全オープンソース化により、自社環境での運用も可能です。API利用とセルフホスティングの両方を選べる点は、企業の利用形態に応じた柔軟性につながります。
オープンソースAI競争の新たな局面
GLM-5の公開は、オープンソースLLM市場に大きな影響を与えています。これまでMeta Llamaシリーズが主導してきたこの分野に、新たな強力な選択肢が加わりました。
MITライセンスの採用により、研究利用だけでなく商用展開も自由に行えます。中国市場にとどまらず、グローバルなAIエコシステムでも存在感を示す可能性があります。
Huawei Ascendチップでの学習成功は、NVIDIAのGPU独占に依存しないAI開発の可能性を示しました。今後、中国製チップを使った大規模モデル開発がさらに加速するかもしれません。
性能・コスト・オープン性の3つを兼ね備えたモデルが加わったことで、オープンソースAI競争は新たな局面に入りました。LLMの導入を検討する企業や研究者にとって、選べる手札は確実に増えています。
