- NVIDIAがCosmos世界モデルやIsaac GR00T N1.6など、ロボット向けPhysical AIの主要モデル群をオープンソースで公開
- Caterpillar、LEM Surgical、NEURA Roboticsなど世界的パートナー企業が製造・医療・サービス分野で次世代ロボットを発表
- デジタルツインからシミュレーション、実機展開までの一貫したパイプラインにより、ロボットの物理世界での学習・行動能力が大幅に向上
Physical AIモデル群の全体像
NVIDIAは2026年1月29日、ロボットや自律システムが物理世界を理解・操作するための「Physical AI」モデル群とフレームワークをオープンソースで公開しました。今回のリリースは単一のモデルではなく、世界モデル、基盤モデル、シミュレーション環境、エッジコンピューティングモジュールを包括する統合的なプラットフォームとなっています。
中核をなすのは、物理法則に基づいた映像予測を行うCosmos Predict 2、文脈理解と推論を担うCosmos Reason 2、合成データ生成に特化したCosmos Transferの3つの世界モデルです。これらはロボットが現実世界のシナリオを事前にシミュレーションし、安全かつ効率的に学習するための基盤を提供します。
Isaac GR00T N1.6とロボット開発パイプライン
ヒューマノイドロボット向けの汎用基盤モデルIsaac GR00T N1.6は、視覚・言語・行動を統合的に処理するVLA(Vision-Language-Action)モデルです。シミュレーション環境で学習した方策を実機に転移するsim-to-real転移に対応し、企業が独自データで追加学習(ポストトレーニング)を行うことも可能になっています。
また、学習方策を定量的に評価するオープンソースフレームワークIsaac Lab-Arenaも新たに公開されました。これにより開発者は、訓練済みモデルの性能を再現性のある形で検証できます。エッジ側では新たなAIモジュールJetson Thorが実機での推論処理を担い、クラウドからエッジまでの一貫したパイプラインが完成しています。

パートナー企業による実用化事例
今回の発表では、多数のグローバル企業が具体的な導入事例を披露しました。建設機械大手のCaterpillarは、NemotronモデルとOmniverse(3Dシミュレーション基盤)を活用し、工場や建設現場のデジタルツインを構築。重機の挙動を仮想環境で最適化してから実環境に展開するワークフローを実現しています。
医療分野では、LEM Surgicalのデュアルアーム型手術ロボット「Dynamis」がFDA認可を取得し、すでに脊椎手術の臨床で使用されています。Isaac SimによるデジタルツインとCosmos Transferによる合成データ生成を組み合わせ、外科医の身体的負担を軽減しながら高精度な手術支援を提供しています。
サービスロボット領域では、NEURA Roboticsがヒューマノイド「4NE1」とサービスロボット「MiPA」を発表し、SAPとの連携によるエージェント統合も進めています。中国のAgiBotはCosmos Predict 2を搭載した「Genie」シリーズを展開し、IntbotはCosmos Reason 2を活用して社会的文脈を理解するソーシャルロボットを開発しました。
オープンソース戦略とエコシステムの拡大
今回の発表で特筆すべきは、NVIDIAがPhysical AI技術のオープンソース化を全面的に推進している点です。Hugging Faceとの連携により、ヒューマノイドロボット「Reachy 2」がJetson Thorと相互運用可能になり、LeRobotエコシステムとIsaac GR00T Nの統合も実現しました。ROBOTISはsim-to-realパイプラインを構築し、UnitreeやLimX DynamicsもIsaac Lab上で歩行・操作の強化学習を展開しています。
NVIDIAは「オープンソースがロボティクスと自律システムのイノベーション推進に不可欠になった」と強調しています。モジュール式のツールキットを広く公開することで、スタートアップから大企業まで、多様なプレイヤーが物理世界で「推論し、学習し、行動する」ロボットを開発できる環境が整いつつあります。AIが言語やコードの世界を超え、物理空間へと本格的に進出する転換点として、今回のリリースは大きな意味を持つでしょう。

