- Google DeepMindがForest Typology(ForTy)2020を公開、地表を10m四方ごとに6種類の森林・土地利用に分類する
- AlphaEarth Foundationsの埋め込みを入力に約170万件のラベルで学習、9,000地点超の検証で分類精度90%、森林と非森林の判別は95%
- 2017年から2025年の年次時系列も早期公開され、Google Earth Engineとfigshareからオープンライセンスで利用できる
ForTyとは何か
Google DeepMindとGoogle Researchは2026年10月22日、世界の森林タイプを分類した地図「Forest Typology(ForTy)2020」を公開しました。World Resources Institute(WRI)とInternational Institute for Applied Systems Analysis(IIASA)との共同研究です。
これまでの世界規模の森林地図は、ある場所に樹木があるかどうかを示すものが主流でした。ForTyは地表を10メートル四方の単位で6つのクラスに分類し、樹木の有無ではなく森林の性質そのものを区別します。前身にあたるNatural Forests of the World 2020は自然林とそれ以外の樹木被覆を分けるだけでしたが、ForTyはさらに細かい区分に踏み込んでいます。
分類は国際連合食糧農業機関(FAO)の定義に基づいており、内訳は次の通りです。
- 原生林(人為的な攪乱の痕跡が見られない在来の森林)
- 自然再生林(伐採や火災のあとに再生した森林)
- 植林地(長い周期で植栽・管理される森林)
- プランテーション(成長の速い単一樹種を集約的に管理する森林)
- 樹木作物・アグロフォレストリー(アブラヤシ、ゴム、カカオ、果樹など)
- その他の土地(草地、農地、都市、水域など)
衛星画像の見た目だけでは、これらの区別はつきにくいものです。ブログでは、自然林が伐採されてプランテーションとして植え直された土地はすぐに緑に戻るため、樹木被覆の地図では変化が見えなくなる例が挙げられています。
AlphaEarthの埋め込みを入力に
モデルの中核には、リモートセンシングデータ向けに設計した独自アーキテクチャが使われています。重要な入力となるのが、地理空間基盤モデルAlphaEarth Foundationsが生成する埋め込みです。
この埋め込みは、10メートル画素ごとに数年分の衛星観測を圧縮して要約したベクトルで、植栽のパターンや成長の周期、収穫のリズムといった時間方向の手がかりを含みます。森林タイプの違いは外見よりも土地の使われ方に由来するため、こうした間接的な信号から用途を推定する設計が必要になります。
学習には約170万件のラベル付き地点を使用しました。専門家による調査、各国・各地域のデータセットに加えて、モデルが苦戦した地域を重点的に見直した結果も含まれています。
出力は各クラスの確率スコアであり、利用者が自分で閾値を設定できます。たとえば規制対応のリスク評価を行う企業は、確実性の高い画素だけを採用するといった使い方が可能です。

図1のように、確率スコアを中間成果として提供する構成が、用途ごとの使い分けを可能にしています。
9,000地点での検証結果
精度評価はIIASAとWRIと共同で実施されました。ランダムに選んだ9,000地点以上について、訓練を受けた専門家2名が高解像度画像と数年分の衛星記録を確認する方式です。
評価項目 | 正答率 |
|---|---|
森林タイプの分類 | 90% |
森林と非森林の判別 | 95% |
研究チームは、他の世界規模の森林地図を上回る結果だったとしています。ただし分類の根拠が土地の用途にかかる部分があり、見た目から用途を推定する難しさは残ります。時系列データは早期公開版の位置づけで、今後も改善を続けるとされています。
EUDR対応という実務需要
ForTyが基準線として想定しているのは、EU森林減少規制(EUDR)への対応です。EUDRはコーヒー、カカオ、パーム油などの産品について、2020年時点で森林だった土地が農地へ転換された場所に由来しないことを求めています。
木材製品についてはさらに森林の劣化がないことも条件で、原生林や自然再生林がプランテーションへ転換された場所からの調達は認められません。原生林と自然再生林をプランテーションと区別できる地図は、この判定に直接必要になります。
2017年から2025年までの年次時系列は、同じ手法を各年に適用したものです。自然林が伐採されてプランテーションとして植え直されるような、樹木被覆の地図では見落とされる変化を捉えられます。
公開形態と位置づけ
地図と時系列データはGoogle Earth Engine上でオープンライセンスのもと無償提供され、figshareからのダウンロードにも対応します。手法を記述した論文は学術誌Scientific Dataに掲載されました。
ForTyはGoogle Earth AIの一部であり、同社のAI for Nature研究の系列に位置づけられています。地理空間基盤モデルの埋め込みを特定タスク向けのモデルの入力として使い、規制対応という具体的な実務に接続した事例として、再現性のある設計が示されたといえます。